2016年3月22日火曜日

オバマとラウール・カストロが国交正常化深化に向け会談

 バラク・オバーマ米大統領は3月21日、ハバナ市中心部の革命広場にあるホセ・マルティ像に献花、訪玖公式日程に入った。マルティ記念館では、「祖国独立に命を捧げたホセ・マルティに表敬するのは大いなる名誉だ。彼の自由、独立、自決への情熱は現代のクーバ人民の中に生きている」と記帳した。

 続いて同広場に隣接する革命宮殿で、ラウール・カストロ国家評議会議長と会談した。オバーマが「人権問題」改善を求め、ラウールは経済封鎖解除やグアンタナモ米軍基地の返還を求めた。従来からの平行線の主張をし合ったわけで、儀式的だった。

 だが両首脳が直接会うのは、ネルソン・マンデーラ葬儀、パナマ市での米州首脳会議、国連総会に次いで4度目。信頼関係は着実に醸成されている。

 双方の実務者は首脳会談後、農産品貿易、農業生産性、食糧の安全性などに関する農業協力覚書に調印した。

 両首脳は革命宮殿内で内外記者団を前に演説した。オバーマは12分45秒で、「両国間には相違点が多く、それゆえに対話を望む。だがクーバの運命を決めるのはクーバ人だけだ」と強調した。これは「内政干渉」批判に対する発言だ。

 大統領はまた、「我々はクーバの保健と教育の成果を認める。だが民主、人権、宗教などの問題に触れないわけにいかない」と述べた。

 外交面で大統領は、コロンビア和平交渉へのクーバ政府の貢献を讃える一方、ベネスエラ政府は人民の要求を受け入れるべきだと、従来通りベネスエラに厳しい姿勢を示した。

 ラウール演説は13分52秒。米国による経済封鎖を批判、大統領の封鎖緩和政策を評価しながらも「不十分」と指摘し、封鎖全面解除が国交正常化深化の基本条件だと強調した。

★日本の某紙はハバナ発で、ラウールが「経済制裁」緩和と発言したと報じているが、とんでもない誤りだ。クーバは経済封鎖(ブロケオ)を絶対に制裁(サンシオン)とは言わない。米政府に制裁されるいわれはないとの立場だからだ。米政府も「禁輸」(エンバーゴ)という場合が多い。独りよがりな制裁好きの日本人記者は、ハバナまで行っても学んでいないようだ。

 ラウールはまた、グアンタナモ基地の不法占拠に触れた。さらに「地域の平和と安定が重要だ」として、米国のベネスエラ不安定化政策を非生産的と批判した。

 その上で、「玖米両国は相違点を尊重し合いながら平和共存を図るべきだ」と呼び掛けた。

 演説終了後、オバーマは「ラウール、国際記者団との初めての記者会見をやらないか」と切り出し、ラウールも仕方なく応じた。すると、米CNNが、「政治囚をなぜ解放しないのか」と質問。ラウールは声を高め、「政治囚がいると言うなら、その名簿を示しなさい。それがまっとうな名簿なら、今夜にも釈放する」と応じた。(マイアミのクーバ系米国人財団=CANF=本部は、これを受けて47人の名簿をメディアに提示した。)

 オバーマに「もう一問」と促された米NBCは、「人権問題」をラウールに質問した。議長は、「人権は擁護している。人権を政治化してはならない。クーバは人権に関する国際条約61のうちの47に加盟している。いったい、どれだけの国がこれほど多く加盟しているだろうか」と返した。

 ラウールは続けて、「男女同一労働・同一賃金」の原則があるが、「その場合クーバでは女性の賃金の方が高いのだ」と強調した。

 次いで「私にばかり質問が来たが、オバーマ大統領にもすべきだ。諸君が私に500もの質問をしたことはわかっているが」と冗談を言い、記者発表を終えた。

 大統領はこの後、米財界人、クーバ国営企業幹部、クーバ人自営業者代表らと会合し、「クーバ経済は変化しつつあり、米国はその過程に付き合う」とし、だからこそ禁輸措置などを緩和してきたと述べた。

 米グーグル社は21日、クーバのパソコンよりも70倍も速い電脳サービスを無料でクーバ人に提供する40人入りのサービススタジオをハバナに開く準備を進めている、と明らかにした。オバーマはこの日の演説で、「クーバが21世紀経済に参加し、クーバ人民が発言しやすくするためには、インターネットへの広範な接近が必要だ」と指摘している。

 会合に経営者が出席した米CLEBER社は、ハバナ西方のマリエル経済特区への進出を決めた最初の米企業。トラクターを製造する。

 米電信会社ウェスタンユニオンは21日ハバナで、今年後半、世界中のあらゆる地域からクーバへの電信為替送金サービスを開始する、と発表した。現在、同社はクーバ国内490カ所にサービスセンターを持つ。2013年に海外から送金された金額は28億ドルで、うち9割は米国からだった。

 ハバナでは21日、第3回商談見本市(エクスポクーバ)が始まった。

 タンパベイの親善試合のためハバナを訪れているMLBコミーッショナー、ロジャー・マンフレドは21日、クーバ人野球選手の米国行きが正常化されるのを願っている、と述べた。

 やはりハバナに来ている元ヤンキース遊撃手、デレク・ジーターは、「クーバ人選手は優れている。米玖両国民には野球の血が流れている」と語った。

 一方、ボリビアのエボ・モラレス大統領は21日、「米国が経済封鎖を全面解除し、グアンタナモ基地を返還した時、オバーマ訪玖がショーでなく実体化する」と指摘した。

 オバーマに同行しているジョン・ケリー国務長官は21日、ハバナで内戦和平交渉中のコロンビア政府代表団と、FARC代表団と別個に会合した。和平交渉の進展度を確認するためという。

 最高指導者ティモチェンコも出席したFARCは、米政府の和平交渉支援に謝意を表明、和平実施過程で最大の阻害要因になると懸念されている極右準軍部隊(パラミリタレス)取締りへの米国の協力を要請した。