ペルーで、児童労働問題を当事者の青少年が中心になって考え、人権や法的庇護改善に取り組んでいる団体「マントック」(Manthoc=キリスト教労働者子弟青少年労働者運動)の創設者および地域指導者の若者2人を迎えた集会が8月2日夜、東京高田馬場NGOピースボート本部で開かれた。
「児童労働を考える~働く子どもによる、働く子どものための運動」と題されたこの会合には50人が参加。1976年10月マントックを創設したカトリック司祭アレハンドロ・クシアノビッチ(80)、アマソニア・ロレート州都イキートス代表トミー・ラウラテ(17)、リマ首都圏リマック地区代表アニー・オリバレス(16)が語った。
若者2人は「ペルー政府は子どもの労働を認めたがらない。私たちは認めさせようと長年闘ってきた」と、法的闘争を語り、クシアノビッチ司祭が、国連国際労働機関(ILO)規約などを挙げて補足説明を加えた。
司祭は、「ラ米諸国に見られる傾向は、子どもの就労可能年齢を引き上げ、刑法適用年齢を引き下げること」と言い、内務省(警察)の取締りが強化されつつある状況を指摘した。
司祭はまた、「子どもが働くのは基本的には、父母や家庭の貧富状態に関係なく、自立するための権利なのだ」と強調した。
トミーは弁護士、アニーは政治学者を志している。将来、それぞれの道の専門家としてマントックの活動を支えるためだ。この団体は、巣立っていった多くの社会人によっても支えられている。
同行しているリマ在住の写真家、義井豊は「かつて永山則夫死刑囚が刑務所内でマントックの存在を知り、著書の印税などを贈ることを決めた」と、継続されている「永山則夫基金」との関係を説明した。
司祭は会合終了後、「今日<解放の神学>は廃れてしまった」と嘆いた。司祭はリマック教会司祭だったグスタボ・グティエレスとともに1960年代から80年代にかけて同神学を実践、著書が故(もと)でローマ法王庁から処分されたことがある。
「今日<性的少数者解放>、<先住民解放>、<環境破壊からの解放>など、<解放>が細分化し、かつてのような人間の生き方や社会状況を全体的に捉える<解放の神学>は行き場を失ってしまった。時代が新自由主義隆盛下で物質主義が支配的になっているのと大いに関係がある」と、司祭は語った。
クシアノビッチ司祭の2006年の著書『子どもと共に生きる』の新刊日本語訳(現代企画室)も紹介された。一行は3日、次の会合地京都に向かった。