2017年2月13日月曜日

メキシコ政府が批判交わす狙いも込め「反トランプ」行動実施

 メヒコ各地の主要都市で2月12日、政府が組織した「政府支持、反トランプ米政権」のデモ行進が展開された。約60団体が参加したが、首都メヒコ市では政権党PRI、前政権党PAN、財界、宗教界、政府系労連などが1万8000人を動員。一方で非政府計1500人も別途、行進した。

 グアダラハラ、モンテレイ、モレリア、アグアスカリエンテス、ビヤエルモサなど諸都市でもデモ行進が実施された。政府系は、メヒコ人への侮辱、国境の壁、移民排斥、関税障壁などでドナルド・トランプ大統領に抗議した。これに対し非政府系は、トランプ批判と併せて、エンリケ・ペニャ=ニエト(EPN)墨大統領退陣を要求した。

 今回の抗議行動を政府が組織したのには、ガソリン値上げで高まった反政府・反大統領世論や生活苦への抗議の声をかき消し「反米」に転じさせようとの狙いがあった。トランプ登場で「メヒコ民族主義」が久々に高まっているが、それもEPN大統領が極度に不人気とあって、高まりは燃え上がるまでに至らない。

 大統領の威信が一層地に落ちたのは、トランプに叩かれっ放しだったことに加え、新事実が暴露されたことによる。トランプが国境の壁建設政策を公式に発表した1月25日、その発表に先立ち、訪米していたルイス・ビデガライ墨外相がホワイトハウスで、トランプの女婿で大統領顧問のジャレット・クシュナーと、壁建設に関するトランプの発表文の内容を調整していたことが明るみに出されたのだ。

 暴露報道によると、ビデガライは旧知のクシュナーから発表文草稿を見せられ、米墨関係悪化を和らげるためとして、文言の変更を求め、クシュナーがそれを認めた。2人はそろって大統領執務室に行き、トランプに修正した原稿を見せた。トランプは怒ったが、修正を受け入れ、それを発表したという。

 メヒコ紙の論説は、ビデガライを「大馬鹿者」と扱き下ろしている。「被害国」の外相が「加害国」大統領の「加害政令」の内容を和らげるなどということは前代未聞、というわけだ。

 レックス・ティラーソン国務長官は2月8日ワシントンでビデガライと会談、両国問題は「壁」から北米自由貿易協定(TLCAN/NAFTA)見直しに移行しつつある感がある。この米墨外相会談の場にもクシュナーが立ち合った。