2017年2月16日木曜日

「メキシコの次はベネズエラか」。トランプの内政干渉発言にベネズエラ外相が激しく反応、緊張走る

 ベネスエラの国家電気通信委員会(CONATEL=コナテル)は2月15日、米CNNテレビ西語放送のベネスエラでの有線放送を禁止した。「ベネスエラの民主と主権を直接的に侵した」のが理由だ。

 同放送は6日、ベネスエラの在イラク大使館がベネスエラ旅券をテロリズムに関係する可能性のあるアラブ人に売却しており、タレク・エルアイサミ副大統領が関与している、と伝えた。これが原因だ。報道は、ミサエル・ロペスという人物の証言を基にしている。

 クーバ系右翼のマルコ・ルビオ共和党上院議員(フロリダ州選出)は真っ先にCNN報道を取り上げ、これを受けて米政府は13日、エルアイサミVEN副大統領を「首領級麻薬取引者」名簿に加え、在米資産凍結処分とした。

 ベネスエラのデルシー・ロドリゲス外相は15日、「CNNは偽りに基づくメディア運動を展開し、VEN野党および国際右翼勢力のクーデター意図に貢献している」と、CNNを激しく糾弾した。

 外相は、「CNNが証言者としたロペスなる人物は野党勢力の回し者であり、イラク駐在VEN大使の名をかたり現金詐取を謀り、同大使館女性職員に性的脅しをかけ、これらの犯罪行為で裁かれようとしている」と指摘した。

 デルシーROD外相はさらに、「公然と反駁したのは、このような米国からの工作は、人民にとって不吉な戦争宣伝行為だからだ」と説明した。

 ニコラース・マドゥーロ大統領は、副大統領に対する米政府の措置を「前代未聞で侮辱的だ」と批判。デルシー外相が米大使館の臨時代理大使に文書で抗議した。

 マドゥーロ大統領は15日、エルアイサミを、犯罪撲滅と治安確保を目指す「社会正義大任務」計画の首席調整官に任命した。政府の「安全な祖国」政策の一環で、やはり犯罪対策のための「ベネスエラ生命尊重任務」と並行して進められる。

 一方、ワシントンではルビオ議員が15日、ベネスエラ野党連合MUDの一翼を担う極右政党の党首で破壊活動教唆罪などで服役中のレオポルド・ロペスの妻をドナルド・トランプ大統領とペンス副大統領に引き会わせた。これを受けてトランプは、べネスエラ政府にロペス釈放を要求した。

 これに対し、デルシー外相は、同日「内政干渉だ」として一蹴。トランプを「ベネスエラ野党と、マイアミマフィアおよびロビーストに唆(そそのか)されて共犯者になった」と扱き下ろした。ルビオは15日、トランプとホワイトハウスで夕食を共にした。

 マドゥーロ大統領はこれまで、あからさまなトランプ批判は避けつつ「良好な関係を築きたい」と呼び掛け、「ベネスエラに対するブッシュやオバマの過ちを繰り返さないよう」柔らかに警告していた。

 だが反カストロ派でもある右翼ルビオの介在で、メヒコに向けられていたトランプのラ米諸国への牙がベネスエラに向かう可能性が出てきたと受け止められる今、マドゥーロ政権は事態を熟考している。

 トランプはメヒコについては独自の意見を持っているようだが、ベネスエラやクーバについては定見がなく、ルビオのような右翼世論代表の言いなりになる恐れが出ており、当時国やラ米知識層は懸念している。

▼ラ米短信   ◎エクアドール国会議長が「爆殺テロ」免れる

 赤道国のガブリエーラ・リバデネイラ国会議長は2月15日、事務所に届いた封書に爆発物が入っていたと明らかにし、殺害される可能性のあったテロを免れた、と述べた。爆発物は爆発しなかったという。

 この国では19日、正副大統領、国会議員137人、アンデス議会議員5人を選ぶ総選挙が実施され、国中が騒然とした空気に包まれている。政権党「パイース同盟」所属のリバデネイラも再選をかけて出馬している。