2017年2月3日金曜日

アルゼンチンのセステートタンゴ「オラシオ・ロモ」を聴く

 タンゴ・アルヘンティーノ(亜国タンゴ)の6人編成バンド(セステート)「オラシオ・ロモ」セステートの演奏を2月3日、東京の中野サンプラザで聴いた。オルケスタ・ティピカ(標準編成バンド)の半分の規模だが、若手奏者ばかりで勢いがある。

 このセステートを率いるバンドネオニスタのオラシオ・ロモは力強く巧みな弾きっぷりが魅力的だ。前半の曲目にある「エル・アボリヒート」(可愛いあざみ)は良かった。

 第一バイオリンのウンベルト・リドルフィは、欧州大陸(コンティネンタル)タンゴの名曲「ジェラシー」で聴かせた。ピアノのフルビオ・ヒラウドは全体的に光った。

 踊りは3組。シルビアyガスパル、ビクトリアyリカルド、アグスティーナyウーゴ。ガスパルは日本でお馴染だ。ウーゴ組は昨年、バイレス(ブエノスアイス)の世界選手権大会で優勝した。細かな振りが目立った。

 男女の絡み踊りが中心のタンゴ舞踊は、人間男女のすることだから振りに限界がある。毎回、どんな工夫をして来るのか楽しみだが、今回も少しは新鮮さが出ていた。アクロバットの絡み踊りでない、正統的な踊りを一曲でも加えれば、かえって新鮮さが出るのではないか。

 歌手は、若手のイネス・クエージョ(27か28歳)。人生も、ラ・ビーダ・タンゲーラ(タンゴ人生)も浅く、歌に味が出ていない。バイレス場末のタンゴ酒場で聴く、人生に疲れたような風貌の初老の歌手の太く低く、くぐもったような声の歌が最高だ。

 この全国演奏旅行は1月下旬から3月上旬まで一カ月半の期間に横浜、金沢、松戸、八王子、長崎、東京中野(本日・明日)、名古屋、豊橋、尼崎、福岡、佐賀、広島、高知、大阪、四日市、山形、札幌、仙台、小美玉、上田、栃木、竜ヶ崎、川崎をどさ回りする。

 うち東京、尼崎、神戸、大阪は昼夜2回の興行だ。バイレス・成田の往復の長旅に、この強行日程とあって、初老の歌手には向かないのだろう。

 亜国人総勢13人。曲目は前半11曲、後半12曲。これにアンコールの「ラ・クンパルシータ」が付く。タンゴは古典が多いが、最近の作「夜明けの道」や、ピアソーラ調、ミロンガも盛り込まれている。

 客層はいつもながら老人男女が圧倒的に多い。中野駅で中央線の電車を降りるや、明らかな老タンゴ愛好家たちが群なしていて、会場に向かって動いていた。帰りも同じだ。

 節分とあって、新井薬師から招かれて上京していた、岩手県花巻市東和町の「金津流丹内獅子踊り」がサンプラザ前の広場で踊りを披露した。なかなか良かった。

 今回のセステート日本公演も主催は民音、および各公演地の新聞やテレビ。ラティーナ社が制作協力。後援は亜国大使館。