2018年4月6日金曜日

★ルーラ・ブラジル元大統領に逮捕命令。保守・右翼勢力による2年前の「国会クーデター」が完成に向かう

 ブラジル連邦判事は4月5日午後、ルイス=イグナシオ・ルーラ=ダ・シルヴァ元大統領(72)に、6日午後5時までにパラナー州都クリチーバの連邦警察州本部に出頭するよう命じた。
 同国最高裁判所は5日未明、ルーラ元大統領が 最高裁での有罪判決確定まで身柄を拘禁しないよう求めた人身保護請求を却下、逮捕命令は時間の問題と見られていた。

 2審は今年1月、ルーラを収賄・資金洗浄罪で有罪とし、禁錮12年1か月を命じていた。ルーラは上告した。
 ルーラは、逮捕命令をサンパウロ市内のルーラ事務所で伝えられ、急遽、サンパウロ州サンベルナルド・ド・カンポ市にある金属労組本部に行き、弁護団や側近らと対策を協議した。同労組はルーラの出身母体。

 ルーラは今年10月実施の大統領選挙への出馬を決めており、支持率は現在37%で、群を抜く最有力候補。逮捕されても選挙運動は可能だが、厳しい戦いを強いられることになる。
 ルーラが所属する労働者党(PT)は、逮捕命令を激しく糾弾している。ルーラに出頭を拒否するよう求める側近や支持者も少なくない。

 ルーラ断罪と逮捕命令は、ブラジル富裕層、保守右翼勢力、米政府などが連携して打った2016年8月の「国会クーデター」によるヂウマ・ルセーフ(前)大統領弾劾に始まるPT政権潰しの陰謀の完成を物語る。

 貧困状況改善などで実績を上げ、国際的政治家となったルーラが政権に返り咲けば、富裕層などは再び、思い通りに国富を支配できなくなる。これが本質だ。

 ルーラは2期8年の大統領在任中、新自由主義を批判しつつ、それを使って経済運営を図りながら、「より良い世界」を希求するアルテルムンディスタとして国富再分配に努めた。
 子飼いの後継者ルセーフは、この国初の女性大統領となった。だが大統領弾劾条件としては些細な理由で、リオ五輪閉幕直後に追い落とされた。

 ブラジルでは国営石油ペトロブラス、最大手建設会社オデブレシ(オデブレヒト)などが絡んだ大規模・巨額の汚職事件が明るみに出され、その関連でルーラは生贄にされた。
 ルセーフ弾劾の中心人物の一人だったミシェル・テメル現大統領を含む相当数の政治家は、ルーラの「汚職」よりも、はるかに巨額の収賄事件に関与している。

 巨悪はほんの一部しか裁かれず、保守・右翼勢力の最大・正面の敵ルーラの政治生命が断たれようとしているのだ。ルーラにも甘さはあっただろうが、そこを茶番と陰謀に付け込まれた。

 トランプ政権と、亜伯両国などラ米右翼政権は、ルーラを政治的に葬り、ベネズエラのマドゥーロ・チャベス派政権を潰そうと画策中。
 社会主義キューバを弱体化させ、サンディニスタ・ニカラグア政権やエボ・モラレス大統領の改革政権を将来的に潰そうとも謀っている。

 今月13~14日リマでの第8回米州首脳会議は、米州の保守・右翼と、少数派となった進歩主義・左翼の両潮流が相まみえる場となる。ペルー政府は、ニコラース・マドゥーロVEN大統領への招待を撤回している。

 ブラジルは「国会クーデター」によって「政治的バナナ共和国」に成り下がった。さらに今、最重要政治家を潰すことで奈落の底に落ちつつある。