☆★☆★☆「キューバ革命の指導者」の称号を持つ社会主義キューバの精神的指導者フィデル・カスト前国家評議会議長 (85)が3月1日、ハバナ港に同日入港したNGOピースボート(PB)の世界一周航海船オセアニック号の、広島・長崎被爆者10人を含む船客770人と会合した。
★この日、ハバナ市内の会議殿堂で「核兵器のない世界のためのフォーラム」が開かれ、前議長フィデルは壇上に、吉岡達也PB代表、広島・長崎被爆者代表らとともに着席した。
☆現地のPB関係者からの情報によると、フィデルは、国会本会議場としても使用される大会議場の中央席を埋めた日本人たちに、広島・長崎の被爆の実態と悲劇をもっと世界に伝えるべきだと訴えた。フィデルは9年前の2003年3月初め、2度目の来日時に広島市を訪問し、被爆の傷跡に衝撃を受け、その後、折に触れて、その印象を語ってきた。
★フィデルはまた、現代世界の核弾頭2万5000発の不条理な存在を糾弾するよう、呼び掛けた。
☆フィデルは2010年7月以降、イスラエル・米国とイランの対立関係を軸とする中東危機が核戦争の引き金になる虞(おそれ)を絶えず警告してきた。吉岡代表は、中東非核化構想を持ち、PB船が今月下旬地中海に入ってから、同構想を広めるため活動することにしている。
★さらにフィデルは、かつて南太平洋で行なわれた核実験の悲惨な結果を問題にしつづけるよう、注意を喚起した。PB船は今航海で横浜出港後、最初の寄港地パペーテに行くまでの期間およびタヒチで、南太平洋の被曝問題を中心テーマに取り上げていた。
☆前議長は、平和と人類生存のために闘い続けるよう強く訴えた。
★会合では、広島・長崎被爆者代表、タヒチ被曝者代表が経験を語った。丹波史紀福島大学准教授は、東電福島原発大事故について話した。チェルノブイリ原発事故の被曝児童ら2万6000人の治療に当たったキューバのタララー病院のフリオ・メディーナ院長も発言した。
☆フィデルは吉岡代表に対し、広島・長崎の被爆生存者の証言集を本として出版しようと提案し、これを同代表は受け入れた。
★一方、吉岡代表はフィデルに、福島事故で被曝した児童らに医療手当を施すため、チェルノブイリ事故に遭った児童たちの治療経験のあるキューバと医療上の協力関係を築きたいと提案した。
☆現地報道によると、吉岡代表は取材に応じて、米政府によるキューバに対する経済封鎖に反対する立場を表明した。代表は、キューバの港に入港した船舶がその後半年間、米国の港に入港できないという米政府の制裁措置があることも指摘した。
★フィデルは2010年9月、ハバナに入港したPB船乗客700人と初めて同種の会合をした。船上講師として乗船していた筆者も会合に出席した。
【参考資料:拙稿「アレイダ・ゲバラ医師に聞く」(月刊誌「世界」2011年11月号掲載)。同医師は両国間の医療協力についても語っている。】