2012年4月29日日曜日

パネッタ米国防長官の南米歴訪終わる

▼▽▼レオン・パネッタ米国防長官は4月23~27日、コロンビア、ブラジル、チリの南米3国を歴訪した。米国のラ米とりわけ南米に対する影響力が衰退しつつある状況の下で、米国の最強部門である軍事を通じて影響力の回復を図るとともに、中国の進出を見据えながらアジア太平洋地域での安全保障への南米側の協力を得るのが、歴訪の目的だった。また兵器販売も図った。

▽米国は2001年以降、コロンビアゲリラ殲滅が主要な狙いの「コロンビア計画」に計80億ドルを援助し、国軍がコロンビア革命軍(FARC=ファルク)などゲリラ組織に攻勢をかけるのを支援してきた。パネッタ長官はボゴタで、その成果を讃えた。

▼コロンビアには、米軍が共同使用できる軍事基地が複数ある。コロンビア軍と、フロリダ州に本拠を置く米南方軍が組んで、中米の安全保障に関与するという戦略があり、中米では、ホンジュラスにある米空軍基地が中心拠点になる。

▽長官は米軍が使用できるトレマイダ基地を訪れ、コロンビアがヘリコプター「ブラックホーク」10機など航空機15機を買うことになった、と明らかにした。同基地には最近、イスラエル国防相が訪れており、同国防相はその後、南米歴訪直前のパネッタとワシントンで会談している。以前からある米・イスラエル・コロンビアの軍事協力関係の緊密化をうかがわせる。

▼パネッタはブラジリアでは、セルソ・アモリン国防相と会談した後、リオデジャネイロの上級軍事学校で25日講演し、中国の南米進出と存在強化に鑑み、アジア太平洋地域での米国と南米諸国の軍事協力関係が重要だ、と語った。長官はまた、ブラジルが米国製最新鋭戦闘機を買えば、その技術を移転するのにやぶさかではないと述べた。

▽最後の訪問国チリでは26日、アンデレス・アジャマン国防相と会談し、セバスティアン・ピニェーラ大統領を表敬した。国防相会談後の記者会見で、アジャマンは会談内容を踏まえて、「米国がラ米の安全保障を支える時代は終わった。ラ米の内外問題に軍事介入する時代も終わった」と前置きし、「今は<協力>という言葉が正しい。ラ米は平和地域として、全球的脅威に対応するための共同戦略を練りつつある」と述べた。アジャマンはまた、太平洋同盟(メキシコ、コロンビア、ペルー、チリ)の経済を柱とする関係が強化されつつあることを強調した。

▼国防相と長官は、サンティアゴの外港バルパライソ市内のコンコン地区にあるアグアヨ基地を「米軍が訓練を理由に軍事進出拠点にしようとしている」との見方を否定した。

▽同基地内では、チリ軍および警察が訓練を受けてきた。二人は、「訓練は国連管理下にあり、米軍が指揮しているのではない」と否定した。チリでは、1973年のピノチェークーデターの背後に米政府がおり、米軍がピノチェー軍政と密接な関係にあったことから、米軍の動向には極めて敏感だ。

▼長官は帰国に先立ち、チリ北部イキーケでのチリ3軍合同演習をアジャマンとともに視察した。長官に同行した米国防省筋は、米軍を主体とするNATO軍のアフガニスタンからの完全撤退に備え、ラ米諸国に治安確保上の協力を要請することにいずれなる、と語ったという。

▽一方、ベネズエラのヘンリー・ランヘル国防相は27日カラカスで、パネッタは南米に武器を売るため、そして脅威を与えるためにやってきた、と非難した。さらに、「我々は<大なる祖国>の強化過程にあり、外部からの脅威に対抗するための盾として、協力強化を図りつつある」と述べた。この日、ベネズエラとニカラグアは軍事協力合意書に調印した。

▼モンテビデオで10月、米州国防相会議が開かれる。米国とベネズエラの広域軍事戦略をめぐる対立が火花を散らし始めた。