2017年4月18日火曜日

  リマの日本大使公邸占拠事件決着から20年。公邸突入の国軍特殊部隊を「民主の英雄」にするか否か、ペルー国会で意見飛び交う▼ベネズエラ国軍がマドゥーロ政権に「無条件忠誠」誓う。19日カラカスでの両派最大動員前に緊張高まる

 リマ市の日本大使公邸が1996年12月17日、ゲリラ組織「トゥパック・アマルー革命運動」(MRTA)の14人の突撃隊(コマンド)に占拠された事件が97年4月22日に決着してから20年になろうとしている。これに先立ちペルー国会は17日、国会内で記念式典を催した。

 当時の日本大使公邸の玄関の模型が「英雄記念碑」として設(しつら)えられ、これを背景にルス・サルガード国会議長(フジモリ派「人民勢力」(FP)所属)が、「ペルーは公邸を解放し人質を救出した軍特殊部隊に負っている」と語った。「英雄記念碑」とは、この「チャビン・デ・ウアンタル作戦」に参加した140人の特殊部隊要員を指す。

 式典には、事件当時のフランシスコ・トゥデーラ外相、ルイス・ジャンピエトゥリ海軍中将、マルコ・ミヤシロ国家警察幹部(現FP国会議員)ら、人質だった人々も出席。MRTAに急襲されてから126日間続いた悪夢の日々や、政府当局と秘かに連絡を取り合って救出作戦を導いたことなどを語った。

 国会国防委員会は17日、ペルーアプリスタ党(PAP)所属のルシアーナ・レオン委員長提出の、特殊部隊140人に「民主の英雄」の称号を与え、勲章、最低賃金と同額の終身年金供与などの恩恵を施す法案を可決した。法案は本会議に送付された。この恩恵には、無料医療・薬品供与、大学教育補助、住宅購入補助もあり、死に際しては、墓石に「英雄」称号が記録される。

 だが、委員会審議や国会議員の間で、さまざまな意見が飛び交った。左翼野党「拡大戦線」(FA)のフスティニアーノ・アパーサ議員は、「特殊部隊は140人、MRTAコマンドは14人、多勢に無勢の作戦だった。軍は国防のためにあり、国家の危機を任務として遂行したまでだ」と指摘。「英雄とは、何らかの物事を思想や原則に基づいて解決したり守ったりする者を意味する。それに特殊部隊には、投降したゲリラ数人を射殺した疑いもある」と反対意見を述べた。

 また、FAのリチャード・アルセ議員は、「<輝く道>(SL)、MRTA、国家テロのいずれにも反対する。特殊部隊は<平定の英雄>と呼ぶべきだ」と対案を唱えた。

 だがFPのフアン・デルアギーラ議員は、「MRTAの行動は破壊活動であり、特殊部隊出動に値した」とし、「全会一致の必要はないが、FAは考え直すべきだ」と反論した。

 国会のロサ・バルトクラ第2副議長は、「反テロリズム作戦に貢献した軍・警察・市民組織の業績を認める法案を国会で通したい。公邸事件を解決した特殊部隊について学校教育で教えるべきだ」と訴えた。

 一方、PPクチンスキ大統領は19日、公邸事件解決20周年の記念行事を催す。また国防省は20日に式典を開く。ホルヘ・ニエト国防相は」17日、突撃時に隊員2人が殉職し、人質だった判事1人が死亡したことに触れ、「特殊部隊は大多数のペルー人民にとって英雄だ」と強調した。

▼ベネスエラ情勢   ◎国軍がマドゥーロ政権に「無条件忠誠」を誓う

 ボリバリアーナ国家民兵隊(MNB)発足7周年記念日の4月17日、その部隊が首都カラカス中心街を行進。ニコラース・マドゥーロ大統領は記念式典で演説、国軍(FANB)とMNBに謝意を表した。大統領は、MNB要員を50万人に拡大させると述べた。

 式典でウラディーミル・パドゥリーノ国防相は「国軍は平和と人民の民主を守る」として、マドゥーロ政権への無条件忠誠を誓った。また、保守・右翼野党連合MUDについて、「国外の極右勢力の支援を受けて、テロリズム、騒乱、略奪、蛮行を続けている」と糾弾した。大統領は、4月初めからの一連の街頭暴動事件で総額500億ボリーバルの損害が出た、と明らかにしている。

 MUDは17日、大統領から交渉を働きかけられた、とのマイアミ紙の報道を事実無根と否定した。野党は、終わったばかりの聖週間で、マドゥーロ人形を「フーダス」(裏切り者のユダヤ人)として燃やしたり、陸橋から吊り下げたりした。これに対し政府支持派は、米大統領、アルマグロOEA事務総長、MUD幹部らの人形を燃やした。

 両派は、ベネスエラ独立闘争開始記念日の19日、カラカスでそれぞれ最大動員をかけて行進し、集会を開く。衝突する危険性があり、緊張が高まってる。

 OEAでベネスエラ政府に厳しいアルマグロ総長を支持する亜URU伯PAR智COL秘CR・HON・GUA墨の11カ国政府は17日、ボゴタで共同声明を発表。ベネスエラ政府に「デモ行進の自由」尊重を、MUDに「責任ある行動」をとるよう訴えた。また政府側には、選挙実施日程を決めるよう求めた。

 一方、ドミニカ共和国(RD)政府は17日、ベネスエラの反政府勢力とCIAがRD国内で会合しているとのテレベン報道を受けて、「捜査する」と表明した。