2017年4月10日月曜日

 ベネズエラ首都カラカスで暴動状態が断続的に続く。マドゥーロ政権は政敵カプリーレス知事に公職追放処分科す。ハバナでは10日ALBA外相会議開催、米政府や米州諸国機構(OEA)の「対ベネズエラ圧力」への対応策練る

 ベネスエラの首都カラカスが4月初めから大荒れに荒れている。3月末、最高裁・憲法法廷が国会権限を代行する決定を下し、後に取り下げた一件をめぐり、国会で圧倒的多数派の保守・右翼野党連合MUD(ムドゥ)は4波の大規模な反政府抗議行進を展開。その若者たちの別働隊が激しい投石を治安部隊に浴びせ、公共施設を破壊、騒乱状態が続いた。

 その間、7日には会計検査院がミランダ州のエンリケ・カプリーレス知事を「公職追放15年」に処した。同知事が、「州予算案を州議会に提出せず、許可なくポーランド、英国両大使館と国際協力協定を結び、企業と違法契約を結んだ」のが理由とされている。

 カプリレースは過去2度、MUDの統一候補として大統領選挙に出馬。故ウーゴ・チャベス前大統領と、ニコラース・マドゥーロ現大統領に敗れた。来年末には大統領選挙があり、知名度の高いカプリーレスはMUDの有力候補の一人。

 公職追放は、知事任期が切れた日から15年続く。次期知事選がいつ実施されるか未定だが、その選挙への出馬はできず、選ばれた新知事が就任した時点で失職、公職追放となるもよう。8日にはカプリーレスの事務所が不審火に遭い、科学警察が捜査を開始した。

 この公職追放措置についてメヒコ、亜国、ブラジル、コロンビアの4カ国政府が直ちに声明を発表、ベネスエラ政府を批判した。これを受けて9日、デルシー・ロドリゲスVEN外相は激しく反発。「コロンビアは自国の現状を見よ。人権が蹂躙されており、労組・農民指導者らが殺されている」と逆襲した。

 メヒコに対しては、「ベネスエラへの内政干渉という不道徳な行為をする代わりに、自国の現実を見よ。何が起きているか、我々は知っている」。ブラジルには、「5400万人の有権者が選んだ大統領が昨年、クーデターで排除された。そうして生まれた非合法政府がベネスエラに民主について講義しようとしている」と皮肉った。

 アルヘンティーナのマクリ政権に対しては、「ひどく腐敗している上に、亜国人民の社会経済的権利に反する犯罪的な新自由主義政策を導入している。ベネスエラから鼻をひっ込めろと言いたい。我が国が聴くべきことなど何もない」と厳しかった。

 デルシー外相はその上で、「ここベネスエラ外務省から糾弾する。あなた方は米政府の利益と命令を満たすためにベネスエラに干渉している」と、はねつけた。

 カラカス首都圏を構成する5区の一つ、エル・アティージョ区のダビー・スモランスキ区長は9日、「マドゥーロ政権はシリアのように化学兵器を使い始めた」と、恐るべき虚偽情報をtwtで流した。大統領は、警察に同区長の捜査を命じた。

 マドゥーロ大統領は9日、「私は近く地方選挙(州・市)を公示するつもりだが心配だ。なぜならMUDがこてんぱんにやられることになるからだ」と述べ、野党連合を揶揄した。

 同大統領、デルシー外相は9日、ハバナに飛んだ。同市で10日開かれる第15回ALBA(米州ボリバリアーナ同盟)外相会議に出席するためだ。この会議は、米州諸国機構(OEA)によるベネスエラへの「米州民主憲章」適用問題、ラ米・カリブを「平和地域」にする方策策定などを話し合う。

 デルシーはハバナで、マイアミの米南方軍司令部がベネスエラへの干渉発言をしていることについて、「我々は南方軍の脅迫には屈しない」と表明した。

 会議には、ALBAのダビー・チョケウアンカ事務局長(前ボリビア外相)、クーバ、ボリビア、エクアドール、ニカラグアなど加盟10カ国の外相もしくは高官が出席。オブザーバーのエル・サルバドール外相も参加する。2日の赤道国大統領選挙決選で、穏健左翼のレニーン・モレーノが保守・右翼の財界候補を破ったことから、ALBAの士気は高まっている。

 一方、MUDは、カラカスで10日新たに大規模な反政府行動を実施する準備中。欧州連合(EU)は10日、「ベネスエラ政府がカプリーレスを公職追放処分にしても、ベネスエラの緊張状態は収まらない」と表明した。