2017年6月10日土曜日

 ニカラグアのミゲル・デスコト元外相(84)が死去▼メルケル独首相の批判をベネズエラが糾弾。検事総長は「制憲議会(ANC)無効」化を最高裁に訴える

 ニカラグアのミゲル・デスコト元外相(84)が6月8日、首都マナグアの病院で死去した。ロサンジェルスに1933年生まれ、61年ニューヨークでカトリック司祭になり、「解放の神学」派に参加。75年、ソモサ独裁打倒のゲリラ戦を展開していたFSLN(サンディニスタ民族解放戦線)の支援団体に参加。79年7月19日のサンディニスタ革命勝利で、革命政権執行部に参加した。

 英語力や在米経験を買われて外相に就任。81年に反革命非正規部隊(コントラ)を送りこんで軍事介入したレーガン米政権を相手に84~86年、国際司法裁判所で闘い、米側の侵略事実認定と賠償命令を勝ち取った。米政府は賠償していない。

 サンディニスタ政権に入ったことで、ヴァティカンから司祭資格停止処分に遭った。だが、「私は常に神と共にある」と言い、意に介さなかった。

 2007年、80年代にFSLN政権の大統領を務めたダニエル・オルテガが政権に返り咲くと、大統領の外交顧問に就任した。08~09年には、国連総会議長を務めた。

 現在、連続3期目にあるオルテガ大統領は「偉大な盟友の死」を嘆いた。ラウール・カストロ玖国家評議会議長ら縁のあったラ米諸国要人らから、弔電や花輪が届いている。

【私ブログ子は、デスコトに長いインタビューをしたことがある。私が「パーデレ(司祭)」と呼ぶと、「(資格停止中だが)構わないさ」と言って、にやりと笑ったのを記憶している。】

◎ベネスエラ情勢

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は6月9日、反政府勢力による一連の暴動で破壊・略奪された民営商店舗442軒への補償金として計2985億bf(約1億5000万ドル)を被害者に渡す、と発表した。

 デルシー・ロドリゲス外相は9日、アンゲラ・メルケル独首相が8日、訪問先の亜国ブエノスアイレスで「ベネスエラ紛争の平和解決のため、連携して協力するようラ米諸国に呼び掛ける」と発言したことに対し、「内政干渉であり、反政府勢力の暴力を奨励するもの」と糾弾した。同首相は9日にはメヒコ市で、「ベネスエラのひどい状況を解決するのは容易でない」と発言している。

 亜国サンタフェ州ロサリオ市では9~10両日、ノーベル平和賞受賞者5人が出席して平和会合が開かれている。亜国の左翼アドルフォ・ペレス=エスキベル(APE)は9日、ベネスエラ情勢に触れて、「人民は、人民意志を代表しない為政者に替えて、参加型政権を樹立する権利がある」と述べた。

 さらに、「ベネスエラは、ラ米での覇権を失いたくない米国の策謀によるクーデターの危機に見舞われている」と指摘した。これに対し、保守のコスタ・リカ元大統領オスカル・アリアスは、「ベネスエラでは民主が失われて久しい」と言い、APEと対立した。グアテマラのリゴベルタ・メンチュー、ポーランドのレフ・ワレサ、イランのシリン・エバディも、それぞれ発言した。

 ベネスエラ反政府勢力の中核である保守・右翼野党連合MUDは9日、カラカス22地区で「市民会議」を開催した。MUDによる暴動込みの街頭行動戦術は国際宣伝には効果を発揮したが、国内では批判にさらされている。このため、チャベス派に倣い、政策を直接伝えるため「人民集会戦術」を導入した。

 一方、政府と対立しているルイサ・オルテガ検事総長は8日、マドゥーロ政権が推進している制憲議会(ANC)開設とそのための選挙を「人権、民主、投票権を侵害する」として無効とするよう最高裁に提訴した。MUDは検事総長を支持している。

 カラカスでは、政府がクーデターの芽を摘むため国軍の「浄化作戦」を遂行中で、不満派の佐官・尉官ら現役士官14人が4月に逮捕され拘禁中、との情報が流れてる。