ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は7月17日、制憲議会(ANC)議員選挙(30日)の予行演習として16日実施した模擬投票を「大成功。ANC勝利の前兆だ」と捉え、投票した支持派有権者に謝意を表明。16日にANC反対の非公式「国民投票」を決行した反政府勢力に、対話をあらためて呼び掛けた。政府は投票を「非合法で無効」として無視している。
政府は支持層を固めるため21~23日、首都カラカス・リベルタドール区中心部のボリーバル広場で、「祖国身分証」の追加発給手続きを再開する。この身分証保持者は、格安食糧品配給制度(CLAP)や公務員就職に際し、有利になる。
米国、ラ米保守・右翼陣営、米州諸国機構(OEA)の「従米事務総長」ルイス・アルマグロ、欧州連合(EU)、ドイツ、スペインなどが一斉にANC開設反対を表明しているが、マドゥーロ大統領は、意に介さず一蹴した。
だが米政府は17日、ドナルド・トランプ大統領声明として、30日にANC議員選挙を実施すれば米国は強力な経済措置を速やかに講じると、マドゥーロに警告した。米国務省は、ラ米諸国と国際社会に、ANC選挙中止をベネスエラに呼び掛けるよう要請した。
サムエル・モンカーダVEN外相は外務省で記者会見し、国際社会はベネスエラの状況やMUD投票に関し真実を重視せず、虚偽情報に基づいて判断していると、批判した。
反政府勢力の中核で非公式投票を決行した保守・右翼野党連合MUDは17日、今後の行動日程を発表した。投票の最終結果を18日発表、「国民統合政府」構想を19日発表、全国ストライキを20日決行、国会任命の最高裁判事を21日発表、というもの。米国務省と米南方軍の筋書きに沿っている。
一方、コロンビアのJMサントス大統領は16日ハバナ入りし、17日公式訪問を開始。同日、「ANC構想を廃案にして交渉による解決を図るべきだ」と、マドゥーロに呼び掛けた。同日、ラウール・カストロ玖国家評議会議長と会談する。
この会談について英紙フィナンシャルタイムズ(FT)は、サントスはラウールにマドゥーロの亡命を受け入れるよう要請する、と報じた。この要請案策定にはメヒコや亜国も加わっているという。
FTは根拠として、サントスがマドゥーロ、ラウール、トランプを個人的に知る唯一のラ米指導者であることや、クーバがベネスエラの最重要同盟国であることを挙げている。
だがボゴタのコロンビアメディアは17日、FT報道内容を否定した。サントスは昨年のノーベル平和賞受賞者であり、ラ米域内で何か功績を挙げたがっているのは事実だ。
問題は、2013年4月に民主選挙で選ばれたマドゥーロ政権に、利害を異にするMUD、米政府、国際社会などが退陣を迫るのは正しい行動ではない、ということだ。「ゆっくりと進行するクーデター」と呼ばれる所以(ゆえん)だ。
米政府は、MUDを通じての4月以来のベネスエラ国内での暴力キャンペーンと、内外メディアを動員しての虚偽報道の多い反マドゥーロ宣伝を展開、政権を揺さぶりつつ、OEAでベネスエラ糾弾決議を採択し、これを名分にベネスエラに介入する準備を進めてきた。だが、長引く暴力に国民が反発、OEAの企てもことごとく失敗した。このため戦略を切り換え、非公式「国民投票」を打った。
ベネスエラは30日のANC投票まで2週間を切った。米政府の支援を受けているMUDは反政府行動を激化させようとしており、不安定な社会状況が続いてゆく。