2016年2月28日日曜日

「43人事件を忘れたがっている」とメキシコ大統領を批判

 メヒコ・ゲレロ州イグアラ市で2014年9月26日、教員養成学校生43人が強制失踪させられた重大事件の発生から2月26日で1年5カ月が過ぎた。この日、学生たちの親と支援者は、北東端のタパウリパス州の対米国境東端の街マタモロス市で、事件解明を求める運動を展開した。

 このため事件後、毎月26日に首都メヒコ市で展開されていた抗議行進は、この26日には行なわれなかった。

 エンリケ・ペニャ=ニエト(EPN)大統領は24日、国旗制定記念日に際し、イグアラ市駐屯の陸軍第27大隊基地での式典に出席、演説した。イグアラ市は、1821年に「イグアラ計画」と呼ばれる独立綱領が策定された地。

 この史実に立ってEPNは、「イグアラは歴史的に重要な地であり、いつまでも悲劇的事件と結び付けられたままであってはならない」と述べ、暗に43人失踪事件との関連付けに不快感を表明した。

 これに対し、人権団体やメディアは、「政府は事件解明の責任を果たさずに事件を忘れ去りたがっている」と厳しく批判している。

 大統領が演説した陸軍大隊はまさに、43人失踪の事件当日、事件に関与した疑いがもたれている。だが政府は、同大隊への直接的な捜査を認めていない。このためせ内外世論は、政府には事件解明に意志がない、と糾弾している。

 ある新聞は、「大統領は犯罪者を咎めず、自分の名誉を傷つける相手を咎めようとしている」とEPNを切り捨てている。

 一方、24日はミチョアカン州でホセ=マヌエル・ミレレス医師が率いた自警団発足の3周年記念日。自警団は州内36市を麻薬マフィア「聖堂騎士団」から17ヶ月間解放した。

 だが、市民武装団が治安を回復したのに驚愕したEPN政権は、自警団を抑え込んだ。指導者のミレレスは2014年6月末からソノラ州エルモシージョ市の刑務所に収監されてきた。陸軍用の銃器を不法所持した、という容疑でだ。

 ミレレス釈放を求める弁護士らは26日、ミレレスが自警団結成3周年を機に獄中から電話で発した声を公表した。その中でミレレスは、「政府は我々を裏切り、我々を武装解除し、犯罪組織に身を晒させた。記念日に祝うことなど何もない」と語っている。

 また、「我々は36市を17ヶ月間も解放していたのに、連邦警察、州警察、市警、陸軍部隊が居る州都モレリアでは毎日20人が殺され、車100台が盗まれ、強盗事件が頻発している。なぜだ」と政府当局を批判した。

 ミレレスを描いたメヒコ・米国合作の映画「カルテルランディア」(邦題「カルテルランド」)については、公開された時、私は既に刑務所にいたとして「観ていない」と述べた。
 

2016年2月27日土曜日

後継候補は2018年に選出、とボリビア大統領表明

 ボリビア国民投票(2月21日実施)でエボ・モラレス大統領の2019年大統領選挙出馬が不可能になったことから、政権党MAS(社会主義運動)内部で後継者を探す動きが出始めている。

 MASの元上院議員サンドラ・ソリアーノは2月27日、後継者はモラレスの長女エバリス・モラレス(23)にすべきだ、と表明した。エバリスは大学法学部で弁護士になるため勉学中。

 父親大統領派の若者の政治運動「エボ世代」の中心的活動家でもある。26日で発生後1年5カ月経ったメヒコ教員養成学校生43人強制失踪事件の43人への連帯運動を展開中。また、ボリビアの太平洋岸領土回復の悲願実現を支持するチレ人との連携などを遂行している。

 これに対し、MASの上院議員レネー・ホアキーノ(元ポトシー市長)は27日、「政治家として最高位を志す。私にはその能力がある」と表明した。ホアキーノは2009年の大統領選壺前、モラレスの対抗馬になろうとしたことがある。

 ホアキーノはまた、野党勢力からは、サンタクルース州知事ルベーン・アコスタ(社会民主運動)、政治首都ラパス市長フェリックス・パツィ(第3千年紀)、実業家サムエル・ドリア(国民連合)、カルロス・メサ元暫定大統領、ホルヘ・キロガ元暫定大統領らが出馬する可能性がある、と指摘した。

 一方、モラレス大統領25日、後継者は選挙前年の2018年に決める、と言明した。モラレスは今回の敗北について、「一つの戦(いくさ)には敗れたが、戦争全体には負けていない」と述べた。

 モラレスはさらに、国民投票の投票動向に影響を及ぼしたインターネットによる「愛人醜聞情報」の伝達を念頭に、「社会メディアを尊重するが、嘘偽りの悪宣伝は規制すべきだ」と述べ、政府が規制措置の検討に入ったことを示唆した。

 モラレスはコカ葉栽培労働者全国組織の最高指導者でもあるが、27日開かれた第15回ユンガス-チャパーレ(コカ葉生産)伝統地域特別連合会議」で演説、「大統領任期は4年近く残っているが、大統領罷免の是非を問う国民投票を実施してもいい」と述べた。この国民投票の実施可能性はないが、実施されれば勝つとの自信を示した発言で、敗北後の強がりだろうか。

 内務省は26日、モラレスの元愛人ガブリエーラ・サパタを逮捕、「愛人の地位」を利用して、自身が重役を務める中国系企業CAMCが政府発注事業を獲得したか否かなどを取り調べている。

 ボリビアには中国企業約70社が進出、鉱業、土建などに参入している。

2016年2月26日金曜日

ペルー大統領選まで45日、ケイコ・フジモリが支持率1位

 ペルー大統領選挙まで45日となった2月25日、リマのエキシトーサ紙は支持率調査結果を報じた。1位は従来と変わらず、「人民勢力」(FP)を率いるケイコ・フジモリで33・7%。アルベルト・フジモリ元大統領の長女で、元国会議員。

 2位は、「皆、ペルーのため」(TPP)候補で経済学者のフリオ・フスマン18・3%。3位は、実業家で元州知事のセサル・アクーニャ(「ペルー進歩のための同盟」)の7・3%。

 4位は、「改革目指すペルー人」(PPK)候補ペドロ=パブロ・クチンスキ(PPK)元経済相で、6・8%。5位は、3期目を狙う前大統領アラン・ガルシア(「人民同盟」AP)の6・4%。

 6位は、「拡大戦線」(FA)のベロニカ・メンドサで4・1%。7位は、人民行動党(AP)のアルフレド・バルネチェアの3・8%。2期目を目指す元大統領アレハンドロ・トレード(「ペルーは可能」PP)は2・8%で、8位に留まった。

 4月10日の選挙(第1回投票)で過半数得票者は出そうもなく、上位2候補が6月5日の決選に進出する公算が大きい。その場合、ケイコの進出は堅いと見られており、誰が対抗馬になるかに関心が集まっている。

 第1回投票の結果が判明し次第、決選に向けて、落選した3位以下の候補たちの得た票の奪い合いが始まる。

 現在、各陣営間で足の引っ張り合いや激しい攻撃合戦が展開されている。
 

2016年2月25日木曜日

LATINA3月号・伊高執筆乱反射は「ペルー大統領選」

◎最近の伊高浩昭執筆記事

★月刊誌LATINA3月号(2月20日刊)

「ラ米乱反射」連載第119回 「ペルー次期大統領の最有力候補はケイコ・フジモリ  元国家警察長官マルコ・ミヤシロが政策顧問」(現地リマでの取材を踏まえた4月大統領選挙展望、および80~90年代のペルーの治安状況)

映画評:「エスコバル 楽園の掟」(アンドレイ・ディステファノ監督)=3月12日シネマサンシャイン池袋などで公開=

書評:「文学会議」(セサル・アイラ著、柳原孝敦訳、新潮社)

★月刊誌「映画秘宝」4月号:「パブロ・エスコバル:暴力でのし上がった稀代の無法者 罪滅ぼしか? 貧しい人々に<善>施す」

★映画「エスコバル 楽園の掟」冊子:「麻薬王パブロ・エスコバル  ロビン・フッドとゴッドファーザーを自認した<錬金術師>」

2016年2月24日水曜日

カストロ兄弟の兄ラモーン(91)が死去

 カストロ兄弟の長兄ラモーン・カストロ(91)が2月23日、死去した。認知症を患い、長らく人前に出ていなかった。農業技師で、革命政権の農牧業政策に貢献した。

 1953年7月26日、二男フィデル(現在89)、三男ラウール(同84)がサンティアゴ市内の陸軍モンカーダ兵営を襲撃、失敗に終わった後、ラモーンは逮捕され、収監された。

 革命戦争中は、実家の農場経営を支えながら、両弟を支援。特にサンティアゴ近郊に展開したラウールの東部第2戦線への補給路を構築した。両弟のような政治的野心はなかった。

 カストロきょうだいは7人で、総領で長女のアンヘラは2012年に老衰で死去。二女フアーナ(82)は革命に反旗を翻し米国に亡命、マイアミに住む。肺癌で療養中。著書「カストロ家の真実」(2012年、中央公論新社)がある。この本には、カストロ家の内情が詳述されている。

 三女エンマ(79)はメキシコ在住。四女アグスティーナ(77)は熱心なカトリック信者。7人きょうだいは、5人になった。
 

ボリビア国民投票でモラレス大統領が僅差で敗北

 ボリビア選管は2月23日夜、21日実施のモラレス4選をかけた国民投票でエボ・モラレス大統領が敗れたことを明らかにした。開票率99・72%、改憲賛成48・69%、反対51・31%で、2・62ポイントの僅差で改憲反対派が勝利した。

 モラレス大統領は、出口調査で反対が優勢な趨勢を明確に示していた段階で、先住民票、農村票、在外票の開票を待つと言い、逆転勝利に期待をかけていた。確かに差は縮まったが、賛成が反対を上回ることはなかった。

 モラレスは24日、敗北を認めながらも、「反対派による汚いキャンペーンがあった」と糾弾した。

   これでモラレスは、2019年実施の次期大統領選挙に出馬できないことになった。現任期は2020年1月までであり、モラレスはいったん、政権を離れなければならなくなった。

 モラレス政権下で制定された現行憲法は、連続2選までしか認めていない。モラレスは2005年、旧憲法下で当選し06年1月就任。その後、新憲法を制定、その下で2選を遂げた。今回、改憲によって3選を目指したが、既に10年政権にあり、飽きられていたことは否めない。

 野党幹部の一人、カルロス・メサ元暫定大統領は国民投票結果を受けて、「絶対不可欠な大義はあっても、余人をもって代えがたい人物はいない。そのことが証明された」と述べた。

 南米では昨年末以来、右傾化が顕著だ。アルヘンティーナにマクリ右翼政権が誕生。ベネスエラ国会は保守・右翼野党連合MUDが多数を占めた。これに続くモラレスの敗北で、南米左翼路線の退潮が一層鮮明になった。

 ボリビア政権党MAS(社会主義運動)内部では、モラレスの後継者の地位を狙う権力闘争が始まることが予想される。現時点で有力なのは、モラレスの側近で先住民のダビー・チョケウアンカ外相と見られている。
 

2016年2月23日火曜日

腐敗まみれのホンジュラスで取締支援団が活動開始

 腐敗が蔓延しすぎて動きがとれなくなっているオンドゥーラスで2月22日、「オンドゥーラス反腐敗・無処罰支援団」(MACCIH)が活動を開始した。元ペルー首相で弁護士のフアン・ヒメネスが団長以下50人で、過半数は外国人。

 この支援団は、過去半年、フアン・エルナンデス大統領のオンドゥーラス政権と米州諸国機構(OEA)が話し合った結果、1月19日ワシントンのOEA本部で同大統領とルイス・アルマグリOEA事務総長が調印、設置された。

 以前から収賄など汚職が絶えなかったが、社会保障庁(IHSS)資金から3億3000万ドルが横領され、その一部である九万4000ドルが2013年の大統領選挙時に当選者とされたエルナンデス現大統領の選挙資金に回されていた事実が暴露され、一大醜聞事件になった。この国では、毎年4億4000万ドルもの国庫資金が横領されている、と指摘されている。

 政権党の国民党が腐敗の中心の一つ。官僚機構、財界、外国企業も絡んでいる。

 ヒメネス団長は22日の記者会見で、相手が誰であろうと、いかなる組織であろうと、腐敗があれば摘発すると述べた。支援団は向こう4年間、活動する。活動資金は、政府からの独立性を維持するため、米欧政府などが拠出する。

 オンドゥーラス人の40%は極貧状態にある。