2012年9月25日火曜日

村田晃嗣著『レーガン』を読む


☆『レーガン』(2011年、中公新書)は、必要があって読んだが、元米大統領ロナルド・レーガン(1911~2004)の生涯を描いて、面白い。

★ラ米との絡みとしては、カーター政権による新パナマ運河条約締結、レーガン政権下でのイラン・コントラ事件、ニカラグア内戦介入、エル・サルバドール内戦介入、英亜マルビーナス戦争での英側支持、グレナダ侵攻が少しずつ出ている。

☆ほぼ世界中の情勢に関与している米国であり、相手国の立場をいちいち取り上げ分析するための紙面がないことは、よくわかる。だが、とくにニカラグア内戦画策・介入は、ラ米側から見たら80年代の最悪の出来事であり、読者とすれば、攻め込まれたニカラグアの立場を慮る記述が欲しかった。同内戦は、もっぱらイラン・コントラ事件の視点から書かれている。

★このレーガンが「最も偉大な米国人」に選ばれたというのだが、米国人とは何と能天気なのだろう、と思わざるを得ない。

☆後継のブッシュ父親大統領は1989年12月パナマを軍事侵攻し、NGOの推計で最大8000人の貧しいパナマ人が殺された。この侵略で、カーターがオマール・トリホス将軍と結んだ新運河条約は完全に骨抜きになった。トリホスは、レーガン政権初年度の81年に「謎の死」を遂げた。CIAが関与した暗殺事件と見る向きが多い。この点には、ぜひとも触れてほしかった。

★「北の視座」と「南の視座」のどちらをとるかで、書物の内容は大きく異なってしまう。一人の著者が両方の視座を踏まえるには、大変な努力が必要だろう。

☆南絡みの問題は、南の知識人が「南の視座」で書くのが望ましい。だが、南の知識人は誰も、レーガンを取り上げる価値のある人物とは思わないだろう。