2016年4月29日金曜日

ベネズエラの大物議員カベージョが「クーデター計画」を暴露

 ベネスエラのディオスダード・カベージョ国会議員(前国会議長、政権党PSUV第1副党首、大統領に次ぐチャベス派序列2位)は4月27日テレビ番組を通じ、ニコラース・マドゥーロ大統領を倒すゴルペ(クーデター)の陰謀が米国内にある、と暴露した。

 マドゥーロ政権で運輸相、食糧相などを歴任したエベルト・ガルシア少将が首謀者。ガルシアは運輸相時代、スペインからフェリー3隻を買い付けた際、公金を横領した容疑で追及された2015年4月、米国に逃亡した。

 カベージョの告発によると、ガルシアはチャベス前政権で副国防相を務めたこともあり、国軍の武器や武器庫の位置を知り、その情報を米政府、CIA、DEA(麻薬捜査局)、ペンタゴン(国防省)に伝えた。

 ガルシア一味の中核は、元DEAカラカス事務所職員だった人物らベネスエラ人ら数人。国軍内の同調者を巻き込んでゴルペを起こす計画だった。

 不満派を物資欠乏でたきつけ街頭暴力に駆り立て、社会的混乱に乗じて武装蜂起する段取りで、5月15日が決行予定日だった。その直前に米州諸国機構(OEA)が、ベネスエラの「米州民主憲章」違反を宣言するのを織り込んでいた。

 最近、ルイス・アルマグロOEA事務総長(前ウルグアイ外相)、ジョン・ケリー米国務長官らが米州民主憲章適用の可能性を口にし、カート・ティッド米南方軍司令官がゴルペ計画を漏らし、アルバロ・ウリーベ前コロンビア大統領らが「ゴルペ近し」と発言するなど、一連の出来事があった。その流れとカベージョの暴露は時期的に一致する。

 ベネスエラ国会で圧倒的多数派の保守・右翼野党連合MUDの代表議員団は28日、ワシントンのOEA本部にアルマグロ総長を訪ね、「ベネスエラの制度的危機」打開のため協力を依頼した。政府との対話仲介、ベネスエラ問題を扱うOEA特別大使会議開催、さらに「あるメカニズム」(民主憲章)適用などが「協力」に含まれている。

 同議員団は、米大統領政庁(ホワイトハウス)当局者や、ロベルタ(ロバータ)・ジェイコブソン国務省米州担当次官補にも会った。米国は1980年代までOEAをラ米・カリブ諸国侵略の道具とし、それができなくなった21世紀には、「民主憲章違反」を政権転覆の名分にする戦略をとっている。

 このジェイコブソン次官補は次期駐墨大使に近く就任する見通し。昨年来この人事に待ったをかけていた共和党右翼マルコ・ルビオが、ベネスエラへの締め付け政策を3年間延長するのをホワイトハウスに受け入れさせるのと引き換えに、大使人事を認めることにしたため、と伝えられる。[上院は28日、同政策3年延長と大使人事を了承した。] 

 ベネスエラでは26日、スリア州にある産油中心地マラカイボ市で略奪事件73件、公共施設7カ所への破壊行動が発生、121人が逮捕された。国家警備隊3500人が展開し、治安確保に当たっている。当局は、この一連の事件と「ゴルペ計画」との関連をまだ確認していない。

 ベネスエラは異常な降雨不足によってダムの水位が極度に下がり、厳しい停電を全国で実施している。物資不足などに苛まれている国民の不満は一層高まりつつある。MUDは、マドゥーロ大統領を退陣させるための国民投票実施を要請する署名活動を展開している。

 ゴルペ勢力は、そんな「好機」を捉え、米国、内外大企業、企業と繋がる大手メディアなどと連携しつつある。カベージョは時期を同じくして、ベネスエラ諜報機関からの情報を踏まえて「ゴルペ計画」を暴いたわけだ。

▼ラ米短信  ボリビアのエボ・モラレス大統領は4月27日、エクアドール太平洋岸の地震被災地の一つマナビー市を訪れ、ラファエル・コレア大統領の案内で被災状況を視察した。

 モラレスは救援物資93トンを渡し、「我々が持っている物資はわすかだが、それを分かち合いたい」と語った。ボリビア人救援隊140人も展開している。

 ペルーのオヤンタ・ウマーラ大統領も27日、救援物資とともに現地入りした。コロンビアのJMサントス大統領も既に訪れている。
 赤道国太平洋岸では16日、M7・8の超烈震が発生、死者659人、不明40人、住居喪失3万人が出ている。