ブラジル国会上院のレナン・カリェイロ議長(PMDB所属)は4月5日、現在の政治危機を国会議員たちが乗り切ることができなければ、2018年10月実施予定の次期大統領選挙を2年間繰り上げて、今年10月の統一地方選挙と同時に実施する可能性も出てくると述べた。
議員たちの間では、弾劾手続きを止めて繰り上げ選挙を実施する危機収拾案に賛成する者が増えつつある。
下院(定数513)本会議が今月半ばヂウマ・ルセフ大統領の弾劾を決議した場合、上院(定数81)は過半数で決議でき、その後180日審議し、最終的に3分の2(55人)で弾劾を決めることになる。4月から数えると、10月はちょうど半年後になる。
だがカリェイロ議長も、国営石油会社ペトロブラスから収賄した嫌疑がかけられており、最高裁は3月末、同議長の捜査を当局に許可している。
一方、ルセフ弾劾裁判実施の是非を審議している同国国会下院の特別委員会(65人)は4月6日、弾劾裁判を実施すべきだと下院に勧告する報告書を提示した。報告書は、同委員会審議記録者であるジョヴァイル・アランテス議員(伯労働党)が作成した。
特別委員会は11日、報告書を本会議に送るか否かを採決する。送付された場合、本会議は15日以降採決する見通し。可決には、定数の3分の2(342)の賛成が必要。
弾劾裁判は1992年のフェルナンド・コロル大統領弾劾以来となる。ルセフは2014年に再選された大統領選挙の際、「公金を粉飾決算して選挙資金を捻出した背任行為」を理由に弾劾対象にされている。
エドゥアルド・クーニャ下院議長は6日、ミシェル・テメル副大統領を弾劾裁判にかけるかどうかの是非を審議する特別委員会設置の手続きに入った。テメルは、ルセフ大統領が弾劾裁判にかけられた場合、大統領代行、弾劾された場合、暫定大統領になる職位にある。テメルはまた、政権党連合を先月離脱した最大政党PMDB(伯民主運動党)の党首でもある。
クーニャは5日、最高裁から、ルセフ大統領と同じ「公金粉飾決済」の嫌疑でテメル副大統領を弾劾裁判にかけるか否かを審議するよう求められながら怠っていたとして、弾劾手続きを開始するよう命じていた。
クーニャは、PMDB党員であり、自身が巨額の収賄容疑で起訴されていることから、政治的保身を重視したのか、最高裁命令に従っていなかった。大統領弾劾の是非をめぐる政争はますます政党間の権力闘争の色合いを帯び、混迷の度が深まっている。
政権党連合でルセフらの労働者党(PT)を支える進歩主義党(PP)は6日、政権党に留まる意志を表明した。大統領は6日、弾劾裁判阻止を狙って多数派工作を図るための閣僚など政府高官の人事はない、と述べた。
ブラジルの労働界や知識人はルセフを支持しており、11日には支援集会を予定している。だが財界や保守・右翼勢力はルセフ弾劾実現を支援している。
ベネスエラ、ボリビア、チレの大統領らラ米首脳からはルセフ支持が表明されつつある。米州諸国機構(OEA)のアルマグロ事務総長もルセフ支持を打ち出している。