2012年3月23日金曜日

ウルグアイ大統領が人道犯罪責任を認める

☆★☆★☆ウルグアイのホセ・ムヒーカ大統領は3月21日、国会で「国家によるテロリズムの責任をとる」と表明し、国家と政府の人道犯罪の責任を認めた。

★アルゼンチン人でメキシコ市在住の著名な詩人フアン・ヘルマンの孫娘マカレーナ・ヘルマン(35)は、ブエノスアイレスで1976年に拉致された母親の胎内におり、同年11月初めモンテビデオで生まれた。母親マリーア=クラウディア(当時19歳)は殺害され、マカレーナは名前を変えられウルグアイ人警察官夫婦に与えられた。

☆祖父ヘルマンは長年、息子マルセーロ、その妻マリーア=クラウディの失踪事件を調査し、1990年代末に、真相の一部を突き止めた。殺害された息子夫婦に子供が居たことが分かった。

★1999年、23歳だった若い女性が孫娘らしいことが分かり、2000年DNA鑑定で、それが証明された。二人は劇的な対面を経て、真相解明をウルグアイ政府に要求した。だが、人道犯罪を組織的に実行した軍政時代の軍部将校・警察上層部らを免罪する1986年成立の「訴因時効法」に阻まれた。

☆そこで祖父と孫娘は、コスタ・リカの首都サンホセにある米州司法裁判所に提訴した。同裁判所は昨年2月、ウルグアイ政府に事件の調査と、無処罰・免罪を認めた悪法を無効だと判断した。裁判所のお墨付きを得たムヒーカ政権は昨年、時効法を無効化する新法を制定し、調査を続けた。

★その結果、76年当時の軍政当事者らの逮捕、取り調べが進展した。マリーア・クラウディ殺害の事実が確認され、遺体が投棄された秘密墓地の場所などが明らかになった。

☆この日、モンテビデオ市内の旧軍部諜報機関本部の建物(近く「人権庁」になる)の壁に、「国家テロの犠牲者として母子らがそこに捕えられていたこと」、「米州司法裁判所の判断を政府が遵守すること」を謳った銅板が設置された。

★その後、ムヒーカ大統領が国会で、責任を認める声明を読み上げた。孫娘とともに傍聴席で見守ったフアン・ヘルマンは、「何というパラドックスだろう! 国家テロの犠牲者として長らく牢獄に入れられていたムヒーカが、いま、大統領として国家・政府の責任を認めるとは。倫理的な勇気が必要だったに違いない」と語った。

☆マカレーナは、「前方には、未解決の失踪事件が残っている。国が裁判所の裁定を遵守していくかどうかを見守っていく」と述べた。

★国会での儀式にはタバレー・バスケス前大統領、最高裁長官、国会議長、3軍司令官らが出席した。だが時効法を成立させたサンギネティ、それを守り通したラカージェ、バトゥレの3代の保守元大統領は出席しなかった。