スペインの小説を2冊続けて読んだ。アナマリーア・マトゥーテ(1925年生まれ)著『北西の祭典』(1953年、大西亮訳・2012年・現代企画室)と、フアン・マルセー(1933年生まれ)著『ロリータクラブでラヴソング』(2005年、稲本健二訳・2012年・現代企画室)である。二つの小説の間には半世紀の隔たりがある。
『北西の祭典』は、主要な登場人物の人間がじっくりと描かれ、内戦(1936~39)を連想させる時代背景と重なり合って、重厚な味を醸している。多感な少女時代に内戦を経験した著者ならではの作品だ。これは傑作だ。
一方、マルセーの作品は、私には駄作に思えた。細かく読む興味を早くから失い、大方の筋と結論を確かめて、閉じてしまった。著者が72歳になった時の小説だが、もっともらしく南米、暴力、性などを絡めており、ごてごてしている。ハリウッド式プロットの悪しき全球化(グロバリサシオン)の影響さえうかがえる。主人公の下手なハードボイルドぶりが鼻につく。
2冊とも同じ出版社の同一コレコレクションに収められているが、質には大きな隔たりがある。こういうことは、よくあることなのか。