西墨両国合作のドキュメンタリー映画「マレタ・メヒカーナ」(英語でメキシカン・スーツケース)を試写会で観た。スペイン内戦(1936~39)の現場で写真を撮った3人の写真家が残したネガティヴフィルムを通じて、同内戦の意味をえぐる優れた作品だ。
私は学生時代から数多くのスペイン内戦関係の史書、ルポルタージュ、文学を読み、映画を観てきたが、本作は特に優れた作品の中に座を占めている。
ロバーロ・キャパ、その恋人ゲルダ・タロー、デイヴィッド・シーモアの写真家3人の命をかけた撮影行動は、計126本のフィルム(映像4500コマ)が日の目を見たことによって、見事に甦った。
キャパの助手チキ(イメレ・ヴァイス)の存在が大きかった。彼が、多くの亡命者を受け入れたカルデナス墨政権の駐仏大使にネガを納めた3つの長方形の紙箱を渡し、ネガはメキシコに着いた。これが在墨米人の手に渡り、95年にネガの存在がわかった。
だが曲折を経てネガが、キャパの実弟コーネルがニューヨークで運営していた国際写真センターに渡されたのは、2007年のことだった。
その仲介をした英国生まれの帰化メキシコ人女性トリーシャ・ジフが、監督、製作、脚本を担当し、この映画を作った。彼女は、「大きな目的に情熱的に関わることと、中立の振りをしない人々を描いた映画」だと、本作を形容している。アンガージュマンである。
★8月24日から、東京・新宿のシネマカリテで公開される。電話03-3352-5645 必ず観ることをお勧めする。[参考書:『ボスニアからスペインへ-戦(いくさ)の傷跡をたどる』(伊高浩昭著、論創社)]