ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は5月2日、制憲議会議員選挙を3日告知すると発表した。国軍(FANB)は、ブラディミロ・パドゥリーノ国防相名で、「外部勢力による内政干渉、反政府勢力の政治的不寛容、反政府勢力過激派による暴力・蛮行・不安定化行動を前にして、広範な世論を喚起する名案だ」と、支持を表明した。
反政府保守・右翼政党連合MUDは、大統領提案を前にディレンマに陥っている。提案を受け入れれば、街頭行動による「騒擾状態」演出で政権打倒に持ち込む戦略が中断を余儀なくされる。拒否し選挙を蹴れば、2005年12月の国会議員選挙時にボイコットした結果、国会全議席をチャベス派に奪われた苦い経験の再来となる。
逆に見れば、どう転んでもマドゥーロ政権に有利な選挙提案であり、ここに政権側の狙いがある。米国務省の西半球担当次官補マイクル・フィッツパトリックは、「ベネスエラはまたも試合中に規則を替えた」と反応した。MUDと連携してマドゥーロ政権を倒したい国務省にも、マドゥーロ提案は「意外な隠し球」だったようだ。
MUD幹部のヘスース・トレアルバは、、「MUDには、闘争続行のために十分な内外からの支援がある」と述べ、資金が潤沢なことを臭わせた。
2日もMUDの別働隊が破壊活動を繰り返した。オンブズマンのタレク・サアブは、カラボボ州バレンシアでオンブズマン事務所が略奪され放火されたと発表、犯人の若者を映したビデオ映像を公開した。これで破壊されたオンブズマン事務所は全国で8カ所となった。
ララ州では、MUD派暴徒が国営石油PDVSAの油送車一台に放火、炎上させた。また首都カラカス市チャカオ区では、警官一人がMUD派暴徒に暴行され、私刑に遭う前に救出された。
一方、サンサルバドールでは2日、ラ米・カリブ諸国共同体(CELAC)の緊急外相会議が開かれた。エル・サルバドール(ES)のサンルバドール・サンチェス=セレーン大統領は開会演説で、「合法政権下にあるベネスエラが早期に安寧・安定を回復するために、兄弟諸国として連帯しつつ努力を払おう。ベネスエラ憲法の枠内で対話による解決を図るのが正しい道だ」と呼び掛けた。
会議は非公開だった。今会議開催を要請したベネスエラのデルシー・ロドリゲス外相は、閉会後の記者会見で、「対話と安寧のために建設的、有益、協力的な会合だった。対話過程に参加するよう要請した国々はみな受諾してくれた」と語った。
さらに質問に答える形で、「反政府勢力(野党)の一部は叛乱を目指している」と糾弾。「ベネスエラはワシントンの命令下に置かれることなどまっぴらごめんだ。アルマグロ(事務総長)のOEA(米州諸国機構)は国際法違反だ」と非難した。
ベネスエラの同盟国クーバのブルーノ・ロドリゲス外相は、「討議は建設的で対話を支持し、ベネスエラ人民への主権と独立への支持が際立った」と指摘。「CELACは、OEAと異なり、我々独自の思想、精神、文化に彩られている。LAC(ラ米・カリブ)域内の問題を話し合うのに、域外の大国(米国・カナダ)を加える必要はない」と、米加両国が加盟しているOEAを批判した。
ボリビアのフェルナンド・ウアンクニ外相は、「ベネスエラ問題は、外部からの押し付けや政治的利害抜きで対処せねばならない」と強調、OEAの内政干渉を批判した。
しかし、内政干渉に固執する伯PAR秘墨のラ米4カ国と、ベネスエラから援助を受けていないカリブ英連邦系のTT・バハマ・バルバドスの3国、計7カ国は外相も代理も派遣せず、欠席した。全会一致制をとるCELACの今外相会議は、共同声明を策定できずに閉会した。
議長を務めたウーゴ・マルティネスES外相は、「声明は出せなかったが、問題の深刻さを軽減して、今月後半ドミニカ共和国(RD)で開かれる別のCELAC会合に臨むことができる」と述べた。