2017年5月2日火曜日

 ベネズエラのN・マドゥーロ大統領が制憲議会を開設し「人民憲法」制定と発表。デルシー外相がラ米8カ国を内政干渉で糾弾。野党指導者夫人が「反政府行動は無政府主義と蛮行に堕した」と嘆く。サンサルバドールで2日CELAC外相会議開催へ

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は5月1日、首都カラカスでの「国際労働者の日」の政府支持派労働者大集会で演説、「平和を確立し、ファシストクーデターの陰謀進行を打ち破るための手段が他にないため、労働者階級は人民制憲議会を開設し、独自性のある新しい憲法を制定する」と強調、少なくとも500人の制憲議会議員を選出する選挙を実施すると発表した。

 大統領は、故ウーゴ・チャベス前大統領が1999年に制定した現行のボリバリアーナ憲法を「強化するため」と説明した。これに対し、メイデー行進を首都で別途実施した反政府勢力の指導部である、保守・右翼野党連合MUDは猛反発し、徹底抵抗する方針を打ち出した。MUDは、18年末に予定される次期大統領選挙の早期繰り上げ実施を政府に要求している。

  しかしエリーアス・ハウア大統領制憲議会委員会委員長(教育相、社会開発・ミシオネス革命担当副大統領)は2日、野党を含む全政党に制憲議会開設とその選挙に関し説明会を開くよう命じられた、と発表した。ハウア委員長は、現行憲法には「クーデター政権による憲法廃止を防ぐ条項がない」として、同条項を盛り込むなど憲法強化が必要との考えを示した。

 ローマ法王フランシスコは4月29日、ベネスエラの対話確立のための交渉はMUDが分裂したため成功しなかったと発言、ローマカトリックが主流のベネスエラをはじめとするラ米全域に衝撃を与えた。MUDは1日、法王への公開書簡を発表、「我々は分裂しておらず団結している」と前置きし、「我々が受け入れる対話は選挙だけ」と念を押した。

 法王は1日、発言の影響の大きさに鑑みベネスエラ情勢に関しローマであらためて発言、「ベネスエラ政府と同国社会の全構成者に対し、暴力が極限に達するのを避け、交渉による解決を図るよう呼び掛ける」と述べた。マドゥーロ大統領は、「法王は政治対話醸成のため最大の努力を払っており、敬意を表したい」と謝意を表した。

 2度目の法王発言にMUDは反応していないが、コロンビア外務省の主唱で亜URU伯PAR智コロ秘CRのラ米8カ国政府が賛同。併せて、「人権尊重、暴力行使停止、法治国家回復、<政治囚>釈放、国会機能回復、選挙日程発表」を呼び掛けた。

 これを受けてデルシー・ロドリゲスVEN外相は1日、「非合憲政権ブラジルおよび他の7カ国は、国際法を破り、ゴルペ(クーデター)を奨励する重大な過ちを犯した」と8カ国政府を糾弾した。

 ニカラグアのダニエル・オルテガ大統領は「ベネスエラを不安定化させている右翼勢力」を非難、マドゥーロ政権断固支持を表明。エル・サルバドールのサルバドール・サンチェス=セレーン大統領もマドゥーロ政権支持を打ち出した。同国の首都サンサルバドールでは2日、ベネスエラ情勢をめぐるCELAC(ラ米・カリブ諸国共同体)の緊急外相会議開催が予定されている。

 ハバナ革命広場での労働者100万人行進で演説したクーバ労働者中央連盟(CTC)のウリーセス・ギラルテ書記長も、マドゥーロ政権無条件支持を表明、ベネスエラへの内政干渉を続ける米州諸国機構(OEA)と「域内反動勢力」を糾弾した。

 マドゥーロ大統領は4月30日、4年間の施政を振り返って、チャベス前政権の公約を遂行してきたと強調、住宅160万戸を建設したと成果を自賛した。

 4月初めから激化している反政府勢力による抗議行動と、その別働隊による破壊活動については、「街頭暴動を凌いで秩序と安寧を維持してきた」と述べながらも、「右翼による蛮行とテロリズムは社会を混沌とさせた。彼らによる4月の行動は待ち伏せの暴力行為であり、ベネスエラを反革命ファシズムに陥れるための策謀だった」と厳しく非難した。

 さらに「文民と軍人の団結で祖国と憲法を守ろう。平和への権利と人命尊重を考えつつ省察しよう」と述べ、「OEA脱退決定はアルマグロ(OEA事務総長)への強烈なボディーブローになった」と指摘。「ベネスエラのOEAからの解放は、<我らのアメリカ>にとり悲劇である旧態依然たるOEAの終焉の第一歩となるだろう」と語った。

 大統領は、最低賃金と食糧購入券(計14万8000b=ボリーバル)を5月1日から60%引き上げ、20万bにすると発表した。闇ドル市場で20万bは約50ドル。年金も連動して引き上げられた。財界や非政府系労連は、生産増大を伴わない賃上げはインフレを招く、と批判している。

 一方、MUD幹部ヘンリー・ラモス前国会議長の妻ディアナ・ダゴスティーノが父親フランコ・ダゴスティーノと交わした電話通話が29日暴露された。ディアナは、「反政府抗議行動は無政府主義、蛮行に堕落した。VP(人民意志)党員が特にひどい。ベネスエラを炎上させよたいかのようだ。PJ(まず正義を)も同じだ。カプリーレス(PJ党首)は(2度大統領選挙に敗れて)失うものが何もない。彼も街を燃やそうとしている」と嘆いている。

 ボリビアのエボ・モラレス大統領は29日、「OEAによる反ベネスエラ決議は反ボリビアでもある。米国によるベネスエラ侵略にアルマグロは加担するな」と事務総長に警告した。モラレスはベネスエラが一大産油国であるのを念頭に、「ラ米での過去のゴルペは、人民蜂起、左翼政権、天然資源保護のある国々で決行された」と指摘した。ボリビアも原油、天然ガス、金、亜鉛、リチウムなど地下資源が豊かだ。