チリ司教会議所属の司教34人(うち3人は名誉司教)は5月18日、ヴァティカン(ローマ法王庁)で、34人全員がフランシスコ法王に辞表を提出、進退を法王の判断に委ねた、と発表した。
500年の布教史を持つラ米の伝統的カトリック国の司教全員が一度に辞表を提出するのは極めて稀で、重大事。まさにチリの元神父フェルナンド・カラディマが2011年までに神学生3人らを性的虐待していた事実が明るみに出て、チリ教会はこの7年間、大揺れに揺れてきた。
フランシスコ法王は今年1月訪智し、性的虐待問題に触れた。4月には犠牲者だった神学生3人をローマに招き、事実関係を正した。そのうえでチリ司教会議を法王庁に招集した。
司教たちは15~17日、法王と4回話し合った。カラディマ元神父は既に永久追放処分となっているが、元神父が犯した罪の隠蔽工作をしたオソルノ司教区のフアン・バリオス司教が今回の話し合いの中心にあった。法王は隠蔽工作に怒りを露わにしたと伝えられる。
司教会議は18日記者会見し「連帯責任」を認めたうえで、「虐待犠牲者、法王、チリ信者に深く詫びる」と謝罪。「チリ教会は既に深い変革の過程にある」と表明した。
バリオス司教は過去2回辞意を表明したが法王は受け入れず、調査を進めるよう指示していた。法王は今回は、同司教および、元神父と親しかった数人の辞表を受理すると見られている。
ラ米を含め世界各地でカトリック司祭による性的虐待事件が起き、カトリック教会の権威が揺らいできた。これが、米国生まれの福音派進出の原因の一つともなっている。
それだけに、チリだけでなく各国司教会議の危機感は深刻だ。