2018年5月24日木曜日

 G7が共同声明でベネズエラ大統領選挙認めぬとし、新たな選挙を要求▼米加主導・欧州同調、日本従う構造▼公正と普遍性に欠けるG7▼米国がVEN外交官2人追放▼VEN政府が「政治囚」釈放か

 G7と欧州連合(EU)は議長国カナダの首都オタワで5月23日、ベネズエラ大統領選挙(20日)に関する共同声明を発表、選挙と選挙結果を認めず、「公正で自由な新たな選挙実施」をマドゥーロ政権に要求した。

 一国の選挙に関する異例とも言える声明発表は、米加両国主導、欧州諸国とEUの賛同で路線が敷かれ、日本は乗らないわけにいかなくなった形だ。

 声明は、20日の選挙について、「容認された国際水準を満たさず、公正で民主的な過程の基本的条件を保障せずに実施された」と非難している。
 このG7声明によって、「ベネズエラ問題」は国際化から一挙に「世界化」したと言える。

 過去3日間、ニコラース・マドゥーロ大統領再選を認めたのは、中国、ロシアの両大国と、キューバ、ボリビア、ニカラグア、エル・サルバドールのラ米進歩主義・左翼陣営と、イラン、トルコに限られている。
 マドゥーロ政権はG7声明を突きつけられ、何らかの態度表明を迫られることになった。

 米州諸国機構(OEA)内と、その外枠の「リマグループ」を中心に反マドゥーロ圧力を強めているカナダのトゥルドー首相が今会議の議長であり、マドゥーロ政権打倒をオバマ前政権期から狙ってきた米国と組んで、声明を策定するのは容易だった。
 EUも米加に同調し、航空便打ち切りなどベネズエラへの「制裁」に参加したり、新たな措置を検討してきた。

 日本は先ごろ、ベネズエラ高官らによる「食糧配布資金の横領」事件に関与した人物の国際的特定作業に参加した。この時も米加欧に日本が加わる形になっており、これが今回の声明の下地になったのは確かだろう。

 だが、ラ米には不正選挙で政権に就いた大統領は、過去のメキシコ、現在のホンジュラスなど少なくない。選挙で勝てないため、あるいは反政府陣営の不正や汚職を隠すために、大統領を弾劾した例もパラグアイ、ブラジルと続いている。

 米国は、埋蔵量世界一とされるベネズエラの原油が欲しい。また、米国と復交し牙を抜かれたキューバに代わってラ米左翼の旗頭になった感のあるマドゥーロを潰し、ラ米での覇権を再興、確立したい。
 こうした「米州の力学」に引きずられるのは日本にとっては得策ではあるまい。

 「非民主的選挙」によって政権が運営されている国、選挙のない国、封建的体制などはアジア、アフリカに幾つもあり、ベネズエラを糾弾するG7が公平と普遍的であることを期すならば、何十もの国々について共同声明を出さなくてはならなくなるはずだ。
 さらに、G7首脳陣の中にも「民主性」を問われている者が複数いる事実を忘れてはなるまい。

 一方、米国務省は23日、ワシントン駐在のカルロス・ロン=ラミーレス臨時代理大使および、ヒューストン駐在総領事のベネズエラ外交官2人に対し、48時間以内に国外退去するよう通告した。前日のベネズエラ政府による米外交官2人の追放措置への報復。

▼ベネズエラが「政治囚」釈放か

 今大統領選挙で敗れた野党候補だったハビエル・ベルトゥッチ福音派牧師は5月23日、ニコラース・マドゥーロ大統領と会談。会談後の記者会見で、大統領は24日、「政治囚釈放を発表する」と明らかにした。

 この記者会見には、大統領の側近であるホルヘ・ロドリゲス通信・情報相も立ち会っており、同牧師の発言に信憑性があることを窺わせる。釈放が事実となれば、マドゥーロは国際世論に配慮したことになる。