2012年2月22日水曜日

ファビオ・ハーゲルのセステートタンゴを聴く

☆★☆今年43歳になる亜国タンゴ界の中堅ファビオ・ハーゲル以下セステート(6人組)の奏でる「タンゴ・ドゥラマティコ(劇的タンゴ)」を2月21日夜、大宮で聴いた。踊り3組、女性歌手1人を加えた総勢13人の亜国人が繰り広げる贅沢な時間だった。タンゴ好きならば、聴き落とすべきではない。

 ☆タンゴも、セステートとなれば、オルケスタ・ティピカ(標準編成楽団)のだいたい半分で、耳にそれなりの重量感を醸す。

☆最年少のチェロ奏者は今年25歳になる若者で、タンゴを奏でるには人生経験の積み重ねが必要だが、若者が演奏している事実はタンゴが未来に引き継がれていく可能性を示し、心強い。

☆本場ブエノスアイアレスでも(モンテビデオでも)、タンゴを職業とするタンゲーロたちの生活は厳しい、とハーゲルは「LATINA」のインタビュー記事で語っている。

☆我々日本人、とりわけ年配者にはタンゴ愛好家が少なくない。日本は世界でも有数のタンゴ市場であり、日本人が亜国のタンゲ-ロたちの生活の一部を支えている。これは素晴らしいことだと思う。

☆大宮の会場では、いつになく若い娘さんたちの姿が目に付いた。彼女たち、そして若い男性らがタンゴ好きに成長していけば、日本のタンゴ文化は継承される。そう願いたい。

☆タンゴを理解し愛するということは、相当に洗練された感性をもっていることを意味する。心が乾燥し切った若者の多い日本の都会に、タンゴで心が潤った若者が増えるのを期待する。

☆ともかく、このセステートは若い。バンドネオンのハーゲルとピアノのセサル・ガルシアが43歳になるところで、あとは第2ビオリン=ヴァイオリン38、第1ビオリン31、コントラバス30、チェロ25だ。歌手ノエリア・モンカーダは32、踊る3組は、激しい絡み踊りに耐えられる青年男女だ。

☆重厚さの代わりに、若い希望が感じられた。だが、大宮の観客2300人が埋め尽くした大劇場でなく、ブエノスアイレスの場末のタンゲリーアでこのセステートを聴くならば、重厚さも味わえるに違いない。もともとタンゴは、狭い空間で奏でられる孤独な音楽なのだ。

☆ハ-ゲルが年長者たちと一つの楽団で演奏するのを、一度聴いてみたい。そう思った。

☆今回の公演は1月22日から3月23日まで、北海道から沖縄まで旅をしながらの、計39回の一大興行だ。亜国・日本間の空の旅も楽ではない。若さが必要なのは確かである。

【参考:月刊「LATINA」2012年3月号「ファビオ・ハーゲル公演レポート及びインタビュー」】
※今後の公演日程は、ラティーナ社に問い合わせを。http://www.latina.co.jp