☆★☆★☆ソ連(現ウクライナ)のチェルノブイリ原発で1986年4月26日、大事故が発生した。原発から4kmの地点には、土地の人々や原発労働者らが住んでいた町プリピャチがある。死の街と化した、この町を含む<ゾーナ(区域)>と呼ばれる、半径30kmの立ち入り禁止区域には、被曝の危険を意識しながら住む人々がいる。その人たちの生きる姿を描いたドキュメンタリーだ。
★ニコラウス・ゲイハルター監督らは、事故後12年経った1998年から99年にかけて現地で撮影し編集し、この映画を99年に完成させた。オーストリア映画で、モノクロ、100分。3月3日から東京の渋谷アップリンクほか、全国で順次公開される。
☆試写会で観たが、インタビューされた、さまざまな立場の十数人が静かな画面で語る映像の連なりに、鬼気迫るものを感じた。
★福島原発の大事故から一周年の時期に日本で公開される意味を考えながら、観ざるを得ない。福島の25年前に起きたチェルノブイリは、日本人の教訓になっていなかった。だから一層、鬼気迫るのだ。
☆そして、福島が今後、日本人と諸国の人々の教訓になりうるかと考えると、心もとない。だから鬼気迫るのだ。
★ゲイハルター監督は、この映画で政治的メッセージを発しないよう注意深く配慮している。観客が自由に判断できるようにするためだろう。ドキュメンタリーではあっても、芸術性を忘れなかったからでもあろう。
☆日本の<プリピャチ>=福島の廃墟から、このような優れたドキュメンタリーが日本人監督の下で制作されんことを期待する。