東京は今、2月3度目の雪に降られているが、前回雪明けの9日夜、渋谷で開かれたLATINA主催の「新しい世界のための音楽祭」を聴いた。
「松田美緒&ビスコイト・グローボ」は、松田が8曲歌ったが、平板だった。それぞれの歌に特色を付けたら、ずっと良くなるだろう。修業をもっと積んでほしい。
「ルシア塩満トリオ」は、ご存じルシアのアルパが効いていた。高橋マサヒロと菱本幸二は数種類の楽器を弾きこなしたが、特に高橋はギターラ、サンポーニャ、ケーナ、クアトロ、フルートを弾き吹きこなした。
現代のアルティスタは、このくらい手広くやらないと通用しないのか。それとも、自分の音楽表現に関係する楽器を独りでこなさなければ、境地に到達できないのか。いずれにせよ、たくさんの楽器が操れるとは素晴らしい。
「サイゲンジ」は、独自の小世界に浸っていた。なかなかいい。だが、独りよがりと紙一重だ。独自性の深化を通じて普遍性に到達することが求められる。
最後の「岩川光+ゲスト」は、ブエノスアイレス在住の岩川の作品6曲だった。岩川は笛吹き男だ。言わば、ラ米的モダンジャズといったところで、聴いていて体が動く。だが衒(てら)いが目立つ。これがうまく隠されたとき、大成の道にかなり進んでいるはずだ。
ギタリストの鬼怒無月(きど・なつき)は松田美緒、岩川と2回出演した。いい演奏だった。