メヒコのノーベル文学賞詩人オクタビオ・パス(1914~98)が1957年に世に出した長編詩「太陽の石」が日本語に訳され、刊行された。パス生誕100周年の3月31日、東京のメヒコ大使館で出版記念会を兼ねた、この詩の朗読会が催された。
やはり1957年にパスとの共訳で、芭蕉の『奥の細道』をメヒコで出版した元外交官林屋永吉、日本文学研究者ドナルド・キーンら、パスと縁の深い文化人らも出席した。
この詩本『太陽の石』の後半には、林屋、キーン、詩人・大岡信らの文章が並ぶ。みな味わい深いものばかりだ。巻末の、監訳者が述懐する翻訳の苦労話も興味深い。
パス生誕100年は、ローマに行った支倉常長が1614年にアカプルコに上陸した400周年でもある。この記念すべき年に、パスの長編詩の翻訳出版は、日墨文化交流史に特質されるべき優れた事業となった。
文化科学高等研究院(EHESC)の出版。監訳者は阿波弓夫、伊藤正輝、三好勝。この3人を含む6人の共訳。
さて、肝心の作品だが、抒情と叙事が絡み合い、走馬灯のように流れている。解説はできない。読者に読んでいただくしかない。