2017年4月15日土曜日

 国連ハイチ安定化派遣団(MINUSTAH)が10月撤収開始へ。ノーベル平和賞受賞5人は、強姦など派遣団の罪状を告発▼ベネズエラ反政府勢力は19日を対政府行動の「天王山」と位置付け。ミランダ州では20店舗など破壊さる▼ベネズエラ外交の重鎮は「OEA脱退論」を牽制

 米州の最貧国アイチ(ハイチ)で評判の悪かった「国連ハイチ安定化派遣団」(MINUSTAH)が10月15日から撤退することになった。国連安保理が4月13日、全会一致で決めた。

 同派遣団は2004年6月、駐留を開始した。ジャン=ベルトラン・アリスティド大統領が米仏加3国によってアフリカに身柄を放置された政変後の混乱に対処するためだった。

 2010年初めには、首都ポルトープランス一帯が激震に見舞われて破壊され、22万5000人が死亡した。派遣団要員102人も犠牲になった。この大地震の後、ネパール兵からもたらされたコレラ菌が、貧しい人々が飲んでいた川の水などを通じて拡散し、約1万人が死亡した。国連は加盟諸国にコレラ対策資金として4億ドルを募金したが、260万ドルしか集まらなかった。

 国連は、昨年の選挙を経て2月7日、ジョヴネル・モイーズ大統領の政権が発足したのを受けて、民主制度が曲りなりにも定着したと判断、派遣団撤収を決めた。撤収後は代わって、「国連ハイチ司法任務部隊」が駐屯する。軍人980人、警官295人で、アイチの法治、国家警察育成、人権擁護を指導する。

 派遣団は最大人数の要員(計1万3000人)を派遣したブラジルが指揮してきた。約20カ国が軍人や警官を派遣してきた。派遣団は治安確保や災害救援などで活躍したが、犯罪も働き、特に強姦事件を数多く起こし、国際問題化した。

 国連に対する強姦告発は2000件、うち未成年者は300件。他に泣き寝入りした女性が少なくない。被害者の女性たちには、精神的に苦しみ続け、妊娠させられ子供を生み、HIVを移された者がかなりいる。

 国連の捜査で、スリランカ兵134人が04~07年に強姦など犯罪を犯した。バングラデシュ、パキスタン、ヨルダン、ナイジェリア、ブラジル、ウルグアイの兵士らも関与した。

 亜国のアドルフォ・ペレス=エスキベル、グアテマラのリゴベルタ・メンチューらノーベル平和賞受賞者5人は13日、アントニオ・グテレス国連事務総長宛てに公開書簡を送り、派遣団の罪状の徹底捜査を求めた。コレラ感染者を含む被害者への賠償も要求した。

 同5人は、派遣団撤収に「大賛成」。「彼らは、かつての米軍のアイチ占領軍のようなものだ。アイチ人には協力が必要であって、後見保護ではない。国連は信用を問われている」と厳しく批判している。

 この書簡には、昨年の同賞受賞者,JMサントス・コロンビア大統領は参加していない。09年の受賞者バラク・オバーマ前米大統領も加わっていない。

◎ベネスエラ情勢:反政府勢力は19日を天王山に定める

 保守・右翼野党連合MUDは独立闘争開始記念日の4月19日、首都カラカスで最大動員をかけ、市内26地点からオンブズマン事務所に向けて抗議行進を予定、「国会尊重」、「囚人釈放」、「選挙早期実施」、「人権擁護」などを訴える。

 ニコラース・マドゥーロ大統領のチャベス派政権に圧力をかけ、米政府や国際メディアの支援を得て、政府の譲歩を勝ち取ることや、揺さぶって政府と軍部の間に亀裂を生じさせるのを狙っている。

 ミランダ州グアイカイプーロ市ロス・テケスでは14日、店舗20軒と市の文化広報用バスが反政府破壊活動集団に襲撃され、破壊された。バスは放火され全焼した。F・ガルセース市長は、州警察は暴挙を取り締まらず放置していたと糾弾した。同州はMUD幹部のエンリケ・カプリーレス知事の権力基盤。

 マイアミの西語紙ヌエボ・エラルド紙は14日、マドゥーロ大統領は最近、今年末の州知事・州会議員選挙実施と引き換えに反政府言動を抑制するようMUD穏健派に持ちかけた、と報じた。大統領は、来年末の大統領選挙まで20カ月間の「平和共存」についても話し合った、という。情報源は匿名。記事の真偽は不明。

 一方、デルシー・ロドリゲス外相は14日、故ネルソン・マンデーラ元南ア大統領の孫、マンドゥラ・マンデーラからマドゥーロ大統領宛てに連帯のビデオメンサヘ(メッセージ) をもらったとして、謝意を表明した。

 ベネスエラ外交界の重鎮、ロイ・チャデルトン前OEA(米州諸国機構)大使は13日、国営テレビVTVで、「ベネスエラはOEA無しでも生きられる。クーバがそうしてきたように。だが私はOEAに留まり、内側から闘い続けるのが望ましいとの立場だ」と述べた。これは政府部内にある「OEA脱退論」を牽制したもの。

 チャデルトンはまた、「米軍のシリア爆撃はベネスエラへの警告でもあろう。米支配層はベネスエラの石油に関心を持っている。我々は注意深く慎重に事を運ぶべきだ」と指摘した。

 ボリビアのエボ・モラレス大統領は13日、「ベネスエラでの暴動事件の責任者はルイス・アルマグロ(OEA事務総長)だ」と非難した。そのアルマグロは同日マイアミで、「OEAは加盟国の民主問題では中立であるわけにはいかない」と述べた。

  ドナルド・トランプ米大統領は14日、フロリダ州の別荘で、コロンビアのアルバロ・ウリーベ前大統領およびアンデレス・パストゥラーナ元大統領と、ベネスエラ問題をめぐって話し合った。