2017年5月29日月曜日

 31日の米州諸国機構(OEA)外相会議を前に反ベネズエラの世論形成キャンペーンが米州で展開されている。保守派知識人らも加担。▼メキシコ学生強制失踪事件から28ヶ月経過

 米政府の影響下にある米州諸国機構(OEA、英語でOAS、本部ワシントン、34カ国加盟、うちベネスエラは離脱通告済み)が5月31日、特別外相会議を開いてベネスエラ情勢を話し合うのを前に、米州で激しい外交戦が展開されている。

 米政府の意向に忠実なルイス・アルマグロOEA事務総長は、24カ国の賛成を得て「米州民主憲章」をベネスエラに適用し、同国を孤立させたうえで、米国や反ベネスエラ路線のラ米諸国によるベネスエラ介入に持ち込む戦術を練っている。

 これに対しベネスエラを支持するニカラグア、ボリビアなど左翼・進歩主義陣営とベネスエラは、保守・右翼系や米国に脅されているカリブ諸国などが計24カ国に至らないよう動いている。11カ国が賛成しなければ、賛成は多くても23カ国止まりになる。

 米国に従うオンドゥーラス(ホンジュラス)のフアン・エルナンデス大統領は5月25日、同国の在ベリーズ大使館を通じ、「ベネスエラ危機解決には、もっと多くの血が流れることが決定的に重要だ。(これを受けて)同国人民を人道支援し、同国に民主を回復させる」と読みとれる文書をベリーズ外交界に配布した。外国の介入の可能性を示唆する文書だ。

 デルシー・ロドリゲスVEN外相は27日、同文書を暴いて糾弾、オンドゥーラス政府に強く抗議。併せて、アルマグロ(OEA総長)が促進するベネスエラ反政府勢力の暴力計画を非難した。

 ペルー人作家マリオ・バルガス=ジョサ、メヒコ人歴史家エンリケ・クラウセ、コスタ・リカ元大統領オスカル・アリアスらラ米の保守・右翼系知識人・政治家らは27日、連名でマドゥーロ政権を批判した。これも米政府のゴルペ(クーデター)教本に「反ベネスエラ世論作り」として盛り込まれている。

 エルネスト・ビジェーガス情報相は、反政府勢力の中核である保守・右翼野党連合MUDを、「外国勢力の介入を誘導する筋書きを実行している」と指摘。「虚偽報道で、暴力死の責任を政府側になすりつけている」と、MUDを厳しく批判した。

 米国務省のアンデス諸国担当次官補代理マイケル・フィッツパトゥリックは27日、エクアドールのアンデス通信に、「政権議会(ANC)開設はベネスエラ危機解決に役立たず、むしろ悪化させる」と述べるなど、反ベネスエラ運動を展開した。

 ANC開担当のエリーアス・ハウア教育相は、「チャベス派政権は、歴史的に疎外されていた多数派人民大衆の社会・政治・文化の権利を拡大した。それを可能にした我々の権力を防衛しよう」と呼び掛けた。ANC議員選挙のうち職能別選挙区に出馬する候補を決める会合で27日語った。

 ララ州都バルキシメトでは27日、国家警備隊(GNB)のダニー・スベロ中尉(34)が反政府勢力による私刑で撲殺された。中尉のオートバイは燃やされ、路上に放置された。

▼ラ米短信    ◎学生43人事件発生から2年8カ月過ぎる

 メヒコ・ゲレロ州イグアラ市一帯で州内のアヨツィナパ農村教員養成学校生43人が強制失踪させられた事件から5月26日で32カ月が経過した。真相はほとんど解明されていない。

 学生の家族や支援者はこの日、メヒコ市のレフォルマ大通りを抗議行進、検察庁前で集会を開き、真相解明を訴えた。事件の鍵を握る麻薬組織「ゲレロ・ウニード」の元首領が、連絡を取り合っていた市警・州警・国警の警察官氏名・電話を記した(元首領の)手帳の存在を隠していた検察庁職員の捜査を実施するよう、家族らは要求した。

 支援団体は、事件発生3周年となる9月15~26日、大規模な事件究明行事を実施する計画だ。