カリブ共同体(カリコム)は5月18~19日、バルバドスの首都ブリッジタウンで第20回外相会議を開き、「ベネスエラ問題は外部からの介入、内政干渉を排し、緊張緩和の後、仲介支援を得て、国内対話によって解決すべきだ」とする共同声明を発表した。
輪番制議長国セントヴィンセント&グラナディーン(SVG)のラルフ・ゴンサルヴェス首相は会議への公開書簡で、「一部の大国がベネスエラ政権を替えようと画策し、カリコムをベネスエラ問題で分断しようとしている」と、米国を暗に非難した。
輪番制議長ルイス・ストゥレイカーSVG外相は、「カリコムはベネスエラ人民を放置しない。事態を懸念しており、安寧と安定が戻るのを願っている。ベネスエラの民主は機能し安定しており、引き続きそうあってほしいとカルコムは期待している」と述べた。
出席したオブザーバー国ベネスエラのデルシー・ロドリゲス外相は、「反政府勢力はニコラース・マドゥーロ大統領の合憲政府を倒そうと暴力に訴えており、人民を苦しめている」と、保守・右翼野党連合MUDを批判。「ベネスエラは米国にとり脅威ではないし、米州地域の問題でもない」と、米国の言い分に反駁した。
続けて、「米国はベネスエラを国連安保理に持ち込んだが、それは無能な使用人アルマグロ(米州諸国機構OEA事務総長)の立場を強化するためだった。米国はOEAを使ってベネスエラに介入しようとしている。だが、そのような手法はリビア、イラク、シリアなどで失敗してきた」と強調した。
さらに、「国際社会にはベネスエラへの偏った見方に立つ介入の策謀がある。その一方で、それら諸国の人権蹂躙は米国によって覆い隠されている」と指摘。「カルコムは、国際法を遵守しており、自分の言い分を一方的に押し付けようとしている者から我々を守る防壁だ」と、カリコムを讃えた。
デルシーは会議終了後、テレスール記者に「外相たちから大なる支援を得た」と語った。また米財務省が18日、ベネスエラ最高裁判事8人を「制裁対象者名簿」に書き加えたことについて、「前代未聞であり、受け入れ難い。我々は外交的措置をとる。最高裁判事たちは帝国による攻撃の犠牲者だ」と述べた。
最高裁のマイケル・モレーノ長官もカラカスで19日、「外交政府の押し付けと内政干渉は受け入れられない」と一蹴した。マドゥーロ大統領も、「ドナルド・トランプは帝国主義者宜しく介入を促進している。トランプよ、ベネスエラから手を引け」と、いつになく強いc調子で反駁sた。
ベネスエラ外務省は19日別途声明を発表、Dトランプ米大統領が18日ワシントンでJMサントス・コロンビア大統領との会談後、「ベネスエラは極めて深刻な問題だ。平和で安定したベネスエラが必要であり、そのためにコロンビアや他の国々と協働してゆく」と述べたことに関し、「限度を超えた発言だ。(T大統領は)国務省に、ベネスエラへの攻撃的な内政干渉政策をなすがままに任せている」と非難した。
声明はまた、「トランプ大統領(の発言)は虚偽情報に基づいている」と指摘。「米国は、政府諸機関を通じてベネスエラの反政府勢力に不法資金を与えているが、直ちに止めるべきだ」と要求した。
トランプは19日、中東・欧州歴訪に出発したが、ベネスエラ情勢に関してはローマ法王フランシスコとの会談が注目される。ヴァティカンの立場は、「対話と選挙による解決」であり、内政干渉や軍事介入は認めない。
ニカラグア駐在のベネスエラ大使フランシスコ・アルーエはマナグアで19日記者会見し、「米国は対ベネスエラ開戦を促進しつつあり、侵略を正当化するため、マドゥーロ政権不安定化を狙う武装テロ集団に資金援助している。以上を、ベネスエラ政府の名において告発する」と、米政府を糾弾した。
同大使はまた、「ベネスエラ国内18市で計335回、暴力行為があった」と明らかにした。非公式集計では、4月からの一連の反政府勢力絡みの暴力事件で死者50人以上、負傷者1万3000人、逮捕者2500人が出ている。
一方、制憲議会(ANC)開設担当者エリーアス・ハウア教育相は19日、ベネスエラのカトリック司教会議と会談。終了後、司教会議のディエゴ・パドロン議長は、「ANC開設は不要だ。現行憲法を順守すればいいし、人民の求めているのが食糧、薬品、治安、安寧、公正な選挙であるからだ」と述べた。また、「政府と教会は人民への福利で協働可能な分野がある」と指摘した。
またルイサ・オルテガ検事総長は19日、ハウアに17日付けで渡した書簡を公表。その中で、「現行憲法はこれ以上改善しようのない最良の憲法であり、チャベス前大統領の最重要遺産だ。人権、民主、人民参加、生活権、社会正義、差別無き平等主義などで世界一進んだ憲法で、憲法を変更すれば、さらなる危機を招く」としてANC開設に反対。18日のハウアとの会合を欠席したことを明らかにした。「身内」からのANC反対表明は、マドゥーロ大統領にとり痛撃だ。
コロンビア国境沿いのタチラ州では18日、国家警備隊(GNB)中尉パウル・マチャードが「人民に武器は向けられない」と述べ、政府発行の「祖国身分証」を鋏で切り刻んだ。同中尉は19日、軍当局に逮捕された。
同州では反政府勢力による陸軍駐屯地襲撃などで治安上の危険性が増し、数日前から,GNB2000人と陸軍特殊部隊600人が治安出動で展開している。、