2017年5月17日水曜日

★★★ベネズエラ政府が全土への非常事態を60日間延長し発動。国連安保理は米国の要請でベネスエラ問題を17日に討議。CELACは、OEA外相会議の31日開催決定を受け、20日開催予定の外相会議を延期

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は5月16日、「非常事態および経済緊急事態」を全土に60日間延長発動した、と発表した。5月13日付け官報に記載されており、同日から有効。治安維持のため憲法の人権庇護条項などが停止される場合がある。

 これを受けて米国は国連安保理にベネスエラ情勢を議題にするよう要請。17日に取り上げられることになった。米国の反ベネスエラの保守・右翼系議員は連名で、ベネスエラ問題の安保理取り上げをトランプ政権に要請していた。米政府は、ベネスエラ反政府勢力と連携、南方軍などを使ってベネスエラ政変醸成工作を展開中。

 保守・右翼野党連合MUDが指揮する反政府行動は暴動に発展、新たに4人が死亡。検察庁集計では、4月初めからの一連の暴動事件などによる死者は43人に達した。これは2014年のMUDによる街頭暴動事件(グアリンバ)の死者数43人と同数。だが非公式式集計では、今回の死者は47~48人とされている。

 MUD幹部フレディ・ゲバラ(国会副議長)は16日、「マドゥーロ大統領周辺ではなく、裁判所、検察、軍部、警察、会計検査院などと交渉する用意がある」と表明した。政府機関を分裂させる狙いがある。ゲバラはまた、17日夜と20日にも反政府行動を展開すると明らかにした。

 反政府勢力による暴動は続き、自動車道で政府配給機関の、食糧や果汁を積んだトラック2台が暴徒に略奪された。タチラ州内では警察署3カ所が放火されたり破棄されたりした。

 コロンビアでのロック祭参加をこのほど拒否されたベネスエラ人ロック歌手ポール・ヒルマンは16日、「われわれチャビスタ(政府支持派)は、かつてユダヤ人がナチスドイツの憎悪に遭ったような状況に置かれている」と,TV番組で指摘した。

 14年に街頭暴動を教唆した罪で服役している極右政治家レオポルド・ロペスの妻リリアン・ティントリは16日オタワでジャスティン・トルドー加首相とマット・デコーシー加外相に会った。これについてデルシー・ロドリゲスVEN外相は、「ティントリはベネスエラへの内政干渉を促進している」と非難。「なぜ自分たち(MUD)がファシズムや殺人を推進している実態を語らないのか」と糾弾した。

 マドゥーロ政権が推進している制憲議会(ANC)開設準備の担当者エリーアス・ハウア教育相は16日、「ANCは平和確立、戦(いくさ)の太鼓打ち止め、国家独立維持、人民安寧生活保障のために開設する。野党勢力に紛争を政治的に解決しようと提案している」と述べた。

 だがMUDは16日、改憲のためのANCに反対する意味を込めて「護憲国民戦線」(FNDC)を結成した。

 一方、ラ米・カリブ諸国共同体(CELAC)は、20日にドミニカ共和国での開催が予定されていた第14回外相会議を無期限に延期した。31日に米州諸国機構(OEA)がベネスエラ問題を話し合う特別外相会議を開くことになったためだ。

 コロンビア外務省は16日、ベネスエラ駐在大使を当面帰任させないと明らかにした。大使は3月31日召還されて以来、コロンビアに留まっている。ペルーも大使を召還したままにしている。