2017年5月18日木曜日

★ベネズエラ陸軍がコロンビア国境に特殊部隊を派遣。暴徒が陸軍駐屯地を襲撃したのを受けて。国連安保理はベネズエラを議題に取り上げず、米国の意図くじかれる▼ブラジルのテメル大統領も<贈収賄認可>で弾劾の危機に直面か

 ベネスエラのブラディーミロ・パドゥリーノ国防相は5月17日、タチラ州都サンクリストーバル市で同日、陸軍第215野砲隊駐屯地が暴徒に襲撃されたことから、同州に陸軍特殊部隊600人と国家警備隊(GNB)2000人を派遣する、と発表した。反政府勢力による一連の暴動事件で国軍施設が襲われたのは初めて。駐屯地司令官の中佐も暴徒に襲われたという。

 ニコラース・マドゥーロ大統領は事態を重視、ゴルペ(クーデター) 制圧作戦「サモーラ作戦戦略計画」(PEOZ)を第2段階に進めた。第2段階では、国家警察機動隊、国家警備隊に加えて、陸海空軍のいずれかの実戦部隊が治安出動する。

 タチラ州はコロンビア北東国境に隣接し、同国の極右準軍部隊(パラス)が密入国を繰り返している。パラスは、コロンビア陸軍の補完部隊としてゲリラ部隊と戦った。また、アフリカ系や先住民の土地を奪い、多くの国内避難民を生んだ。ベネスエラ陸軍の特殊部隊の任務には、パラス制圧も含まれている。

 パドゥリーノ国防相は、暴徒約100人が火炎瓶などで駐屯地を襲撃したが、駐屯地には弾薬庫があり、そこに引火したら大惨事が起きると述べ、事態の重大さを指摘した。各地で反政府勢力の抗議行進や暴動に乗じた略奪事件も起きている。暴徒側の死者が小刻みに増えている。

 一方、国連安保理は17日、米国の要請により非公開会合を開き、ベネスエラ情勢を話し合った。米国のニッキ・ハーリー大使は、「ベネスエラは不安定状態が増幅しており、人権が尊重されなければ、シリアのような道を辿ることになる」と述べ、安保理の介入決議が必要との立場を強調した。

 これに対し、ボリビアのサンチャ・ジョレンティ大使は、「米国の明白な内政干渉がある。米国は仲介者ではなく、ベネスエラの反政府勢力を支援してきた。したがって、この安保理会合は問題解決の障害になる」と反駁した。米国が反政府勢力に資金、攻撃戦略、外交面で肩入れしてきた事実を踏まえてのことだ。

 安保理議長国ウルグアイのエルビオ・ロセリ大使は、「ベネスエラは正式な議題にはならない。理由がないからだ。ベネスエラの紛争はベネスエラ人が解決すべきだ。政府と反政府勢力が打開策を探ればよい。ベネスエラ関係の決議はない」と述べた。

 ベネスエラのラファエル・ラミーレス大使は、「ベネスエラは国際平和と安全保障上、危険な存在ではない。米国は内政干渉し、ベネスエラの最も暴力的な集団を焚きつけている。暴力は、米州諸国機構(OEA)のルイス・アルマグロ事務総長の煽動によるOEAのベネスエラへの内政干渉の直後に悪化した」と指摘した。

 同大使はさらに、「米国には、米州での暴力と干渉の悲しい歴史がある。米国は<人権蹂躙>を介入理由にしようとしているが、ベネスエラにはそれはない。米国は人権蹂躙を理由にシリアやイラクに軍事介入した」と批判。「ベネスエラは、いかなる内政干渉も後見も必要としない。主権尊重を求めるだけだ」と説いた。

 デルシー・ロドリゲスVEN外相は、「(安保理での)米国の宣伝と、アルマグロ支援のための画策は失敗した。証明されたのは、米国によるベネスエラ介入計画の存在だ。米国は世界の殺傷暴力と飢餓の最大の起因者だ。安保理に教訓を垂れる道徳的資格はない」と扱き下ろした。

 コロンビアのJMサントス大統領は17日、訪問先の米国で、「コロンビアと米国はベネスエラ情勢をとても懸念している」と述べた。サントスは18日、Dトランプ米大統領と会談する。

 ベネスエラ政権党副党首ディオスダード・カベージョ国会議員は17日、反政府勢力の中核である保守・右翼野党連合MUDの幹部フリオ・ボルヘス国会議長、フレディ・ゲバラ同副議長、ミランダ州のエンリケ・カプリーレス知事らを「ファシスト」と呼び、コロンビア極右勢力の旗頭アルバロ・ウリーベ前大統領と会合した、と指摘した。

 24日に任期切れとなるエクアドールのラファエル。コレア大統領は17日、訪問先のブエノスアイレスで、「ベネスエラの問題は対話、民主、選挙で解決すべきだ」と語った。

▼ラ米短信  ◎テメル伯大統領が贈収賄を促進か

 伯紙オ・グロボは5月17日、ミシェル・テメル大統領と大手食肉輸出会社JBSのジョスリー・バチスタ社長の録音会話を暴露。その中でテメルは、獄中にいるエドゥアルド・クーニャ前国会下院議長にペトロブラス贈収賄事件について沈黙し続けさせるため賄賂を贈っているかどうかをバチスタに確認している。

 バチスタが、自社系列企業の問題の解決を図るため、テメルが指定した国会議員に現金500万レアル(約16万ドル)入りの鞄を渡した、ことにも触れられている。バチスタは司法取引に応じてテメルとの会話を録音したらしい。

 ブラジル国会はこの報道で大騒ぎになり、テメル弾劾の可能性が早くも指摘されている。テメルは昨年8月末、ヂウマ・ルセフ大統領を弾劾に追い込んで政権に就いた。テメルも汚職疑惑に包まれている。


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