2013年6月21日金曜日

「社会緊迫」のためブラジル大統領が来日を延期


 ブラジルのジルマ・ルセフ大統領は6月20日、社会状況が緊迫状態にあるとして、今月23~30日に予定されていた日本訪問を延期する、と発表した。

 公共輸送料金の値上げをめぐりサンパウロで10日抗議行動が始まったが、全国に波及し、17日にはリオデジャネイロをはじめ18都市で大規模な動員があり、リオ中心部では暴動に発展した。

 大統領は18日、後ろ盾のルーラ前大統領らと対応策を練り、19日サンパウロ州・市およびリオデジャネイロ州・市は料金値上げを撤回した。

 これで勢いを得た抗議デモは20日、80を超える都市に拡がり、緊張状態が増幅した。大統領は1週間の外遊は得策でないと判断し、訪日を延期した。

 抗議する市民は、生活料金を値上げして来年のサッカーW杯ブラジル大会に巨費を投じるとは許し難い、などと訴えている。

 同大会の予行練習を兼ねたサッカーの連盟連合(コンフェデラサウン)大会が15日、ブラジリアでの日本対ブラジル戦で開幕した。大統領は場内の激しい野次で、開会宣言をしばし阻まれた。

 世界中の眼がブラジルに集まっている時に全土に拡大した抗議デモは、ルセフ大統領にとって痛手であり、就任後最大の危機となった。支持率も初めて落ちた。

「新自由主義+社会政策」というルーラ政権から10年続いてきた労働者党政権の経済社会政策は見直しを迫られている。

言わば来年のW杯大会を<人質>にとった抗議運動は、夏季五輪開催地誘致可能性を<人質>にとったイスタンブールの反政府行動と共通するものがある。