ジョージ・オーウェルの『パリ・ロンドン放浪記』(1933年、岩波文庫1989年、小野寺健訳)を読んだ。強烈に面白い。80年の時代の隔たりはあるが、実際に今、両都市に行ったとしても、このルポルタージュ物語を読むほどの喜びは得られないだろう。
趣は異なるが、かすかに、ヘミングウェイの『移動祝祭日』を連想した。
オーウェルは、本書の出版の3年後に勃発したスペイン内戦に<出兵>した。その体験から生まれた『カタロニア讃歌』は、私にとってバイブルのような一冊となっている。
部屋が熱帯の温室のようになった日曜日、本書のお蔭で、心頭を滅却すれば火もまた涼しだった。