ブラジル軍政4代目のエルネスト・ガイゼル大統領(1974~79)は、原爆開発計画を推進していた。このほど解禁された、国軍参謀本部機密文書で明らかになった。
オ・エスタード・デ・サンパウロ紙が8月12日、同文書を基に報じたところでは、ガイゼルは74年6月10日、参謀本部会議で計画推進を命じた。当時インドが核実験に踏み切ったが、これに誘発されてアルゼンチンが核実験をするのではないか、と警戒を強めたのが計画推進の理由だった。
当時、南米ではブラジルとアルゼンチンは相互に仮想敵国視し合っていた。
ガイゼルは、対亜核戦争の可能性を踏まえ、国防戦略の見直しの必要性について検討するよう命じた。
ガイゼルは、核開発と原発開発で後れを取らないようにするため、計画を定めたと説明した。
ラ米では、1962年のキューバ核ミサイル危機の教訓からラ米非核地域化条約(トラテロルコ条約)が生まれ、ブラジルも68年に調印したが、批准は後年おこなわれた。ブラジルが核拡散防止条約(NPT)に加盟したのは98年だった。
ブラジルはガイゼル命令に沿って76年、ドイツとの協定で原発3基の開発に着手した。ヂウマ・ルセフ現大統領は今年6月下旬に予定していた訪日で、原発を購入する商談をまとめる考えだった。だが、都市政策をめぐる政府への全国的な抗議デモで、訪日は中止された。
民政移管後の1988年に制定された憲法は、核武装を放棄している。