2013年8月8日木曜日

アルゼンチン軍政に奪われた「孫」を新たに発見



 亜国軍政時代に政治囚から奪われ軍政関係者に与えられた赤子がまた一人発見された。109人目。「奪われた孫たち」約500人を探してきた「五月広場の祖母たちの会」のエステラ・デ・カルトット会長が8月7日記者会見し、経緯を明らかにした。
 
 この元赤子は、ブエノスアイレス(BA)在住のパブロ・アタナシウ=ラスチャン(37)。父アンヘル・アタナシウと母フリーダ・ラスチャンはBAで1976年4月、軍政秘密警察に拉致され、拷問された後、殺害された。
 
 生後5カ月半だったパブロは、軍人夫婦に与えられた。祖母たちの会は4月パブロに接触し、DNA鑑定を受けるよう説得した。パブロは7月鑑定を受け、このほど真の出自が確定した。
 
 殺された両親はチリ人で、若者の革命運動「革命的左翼運動」(MIR=ミル)の活動家だった。73年9月の軍事クーデター後、二人は別々にBAに亡命し、再会した。二人は亜国のゲリラ組織「人民革命軍」(ERP=エルプ)に参加した。
 
 秘密警察はチリ軍政と連携して二人を監視し、拉致に至った。CIAおよび南米南部軍政諸国が展開していた、亡命者を相互に抹殺し合う「コンドル作戦」により殺害された。
 
 この日の記者会見には、パブロの叔母二人がチリから駆けつけた。祖母たちの会は残る約400人を探している。
 
 パブロを育てた軍人は死去、その妻は存命中。
 
【伊高浩昭執筆「祖母の会」カルロット会長インタビュー(月刊誌LATINA2013年7月号掲載)参照】