2015年6月17日水曜日

16世紀に書かれた『バスク初文集』を読む

 バスコ人ベルナト・エチェパレが1545年、南仏ボルドーで出版した『バスク初文集』(萩尾生・吉田浩美共訳、2014年白水社)という詩集を読んだ。エチェパレはコロンブスが新世界と出遭った(1492年)ころ生きていたカトリック司祭だった。

 司祭らしく「神」を主題にした詩が多い。その中に「この世の暮らしは短く、あの世の暮らしは永遠なのです」という一行がある。

 「神は世界中の何にも増して女を愛しています 女に愛をささやくために天から降りてこられたのでしょう その女のお陰で私たちは神と兄弟になれるのです 神の愛のためにすべての女が賞賛されるべきなのです」という一節もある。

 圧巻は、「バスク語よ、世界に出よ、世界を闊歩せよ、踊りに出でよ」と、バスク語を高らかに謳う「コントラパス」だ。この『初文集』は、バスク語で書かれ印刷された最初の本なのだ。

 「サウトゥレラ」も、「バスク人たる者は皆、頭を上げよ、自分たちの言語が花と咲く日が来たのだから」と、出版を詠い上げる。

 この本の三分の一は解説に費やされている。バスク国、バスク語の歴史は複雑だ。バスク語文法や発音の説明もあるが難しい。

 バスク語は、独裁者フランコの死後、現代のルネサンス期にある。現代文学も書かれている。若いころ、ピレネー山脈の両側のバスク地域を何度か取材した。そのころを思い出しながら、この詩集を味わった。