2015年6月14日日曜日

グアテマラ内戦中の人道犯罪扱った『無分別』を読む

 遅ればせながら、中米人作家オラシオ・カステジャーノス=モヤ(1957~)の『無分別』(2004年、白水社2012年細野豊訳)を読んだ。本の瓦礫の山に埋もれていたものだ。

 グアテマラ内戦中の夥しい数の人道犯罪の実態の報告書「グアテマラ、二度と再び」の編集に主人公が携わるという設定だ。身の危険を感じた主人公はドイツに逃れるが、その地で、報告書を公表したヘラルディ司教の暗殺のニュースに接するという結末。

 人道犯罪の最大の責任者である将軍エフライン・リオス=モントは齢90歳にならんとして、裁判から逃げ回っている。将軍の部下で、将校時代人道犯罪に関与したと指摘されている人物が、現大統領オットー・ペレス=モリーナである。彼は今、大規模な腐敗事件への関与で辞任か、逮捕起訴かの瀬戸際に立たされている。

 史実を踏まえており、現代グアテマラ情勢を理解するためにも読むにふさわしく、面白い。瓦礫の中から、もっと早く見つけ出すべきだった。