サンサルバドール(SS)市内にある中米大学(UCA=ウカ)で1989年11月16日起きた8人虐殺事件の容疑者5人が、2月5日逮SS市内で逮捕された。エル・サルバドール(EL)警察は6日、退役軍人の容疑者全17人のうち、元大佐ギジェルモ・ベナビデスら4人の逮捕を確認した。もう一人の退役大佐イノセンテ・モンターノは5日、米北カロライナ州内で逮捕された。
事件はES内戦中(1980~92)に起きた。殺されたのは、UCAのイグナシオ・エジャクリーア学長、副学長、人権院長、神学図書館長、哲学教授のスペイン人5人、およびサルバドール人1人の計6人のイエズス会士と、サルバドール人女性用務員2人。当時の陸軍特殊部隊「アトゥラカトゥル」の兵士らによって中庭に連れ出され、射殺された。
サルバドール・サンチェスES大統領は6日、逃亡中の12人に、早急に自首するよう呼び掛けた。
事件発生後、ESで容疑者の軍人9人が逮捕されたが、7人は法廷で91年無罪となり、他の2人はアルフレド・クリスティアーニ大統領(1989~94)によって93年に恩赦された。
だがスペイン政府は事件解明を断固主張、ES当局が動かないため2009年、本格的に調査を開始。2001年、国際刑事警察機構(インターポール)を通じて手配したが、容疑者は陸軍施設に逃げ込み匿われた。
次いで15年8月、新たに手配されたが、ES最高裁は容疑者の所在場所確認だけでよいと受け止め、逮捕に動かなかった。業を煮やしたスペイン法廷は1月5日、インターポールを通じて、当該政府に逮捕を義務付ける「赤通告」を突き付けた。ES警察は大統領命令を受けて動き出し、首都で4人を逮捕した。今後は、容疑者のスペインへの身柄引渡が問題になる。
この虐殺事件は内外に大きな衝撃を与え、内戦終結のための和平交渉開始を促す要因の一つとなった。筆者は内戦末期にUCAの現場を取材し、犠牲者の冥福を祈った。