ブラジル法廷第1審(セルジオ・モロ裁判長)は7月12日、ルイス=イナシオ・ルーラ=ダ・シルヴァ元大統領に、腐敗罪で禁錮9年半の実刑判決を下した。弁護団は控訴手続きを始めつつあり、第2審での有罪判決が出るまでは身柄拘禁はない。
だがルーラは2018年10月の大統領選挙に労働者党(PT)から出馬する意向で、選挙前に2審有罪判決が出れば、出馬は不可能になる。21世紀初頭の南米政界を故ウーゴ・チャベス前VEN大統領とともに主導したルーラの政治生命は危機に瀕している。
今回の判決は、ルーラが、伯最大手建設会社オデブレシ(オデブレヒト)とOAS社の契約成約時に豪華住宅を受け取ったのを収賄と見なし、有罪とした。だが、この住宅はOAS名義になっており、弁護側は収賄事実はないと否定している。
来年の大統領選挙の立候補届けは7月30日~8月15日の期間になるもよう。ルーラは主要な出馬予定者の中で30%の支持率を維持、トップに立っている。昨年8月末にルーラ後継のヂウマ・ルセーフ大統領を無理やり弾劾した保守・右翼勢力がルーラを再び政権に就かせないため展開している「政治的陰謀」と、PTをはじめ内外の左翼陣営は批判している。
ルーラが大統領選挙で当選した後に2審で有罪判決が出た場合は、司法審議会が大統領資格を審理する。
ルーラは他の容疑でも捜査されている。オデブレシ資金1200万ドルでサンパウロ市内に「ルーラ研究所」建設用地を買ったか否か。スウェーデン製グリペン戦闘機購入(50億ドル)に際し、影響力を行使して収賄したか否か。
また元PT幹部でルーラの側近だった元上院議員は、国営石油ペトロブラス汚職に関与した元同社幹部を買収して沈黙させる計画にルーラも関わった、と証言、これも捜査対象だ。さらにアンゴラでの建設事業参入に際しても影響力を行使し、オデブレシ経営者と組んで違法行為に関与したという容疑もある。
法廷は、検察庁が機密書類など厖大な証拠物件を提出したことで審理が進んだ、と検察の協力を評価している。ルーラ弁護団は、控訴するとともに、国連人権部門にも訴えると表明している。