ベネスエラの保守・右翼野党連合MUDが指揮する反政府勢力は7月16日、ニコラース・マドゥーロ大統領のチャベス派政権の正統性を否定するため「国民投票」を実施する。
マドゥーロ政権は、憲法大幅修正・条項追加のため制憲議会(ANC)を設置する政策を進めており、今月30日にANC議員選挙を実施する。MUDは、これに先駆け投票で「ANC開設」を否定、それによってマドゥーロ政権の正統性を否定し、大統領選挙の早期実施を内外世論に働きかける戦略だ。
政府は、国家選挙理事会(CNE)が公認していないため、MUDの投票は無効とし、投票結果を無視する考えだ。
MUDと連携する「スペイン・ラスアメリカス民主構想」(IDEA)の大統領経験者5人は15日、MUDの招きで投票監視のためカラカス入りした。IDEAは、保守・右翼系の政府首班経験者のクラブで、米国や欧州連合の保守・右翼陣営と繋がっている。
来訪したのは、アンデレス・パストラーナ元コロンビア大統領、ビセンテ・フォックス元メヒコ大統領、ホルヘ・キロガ元ボリビア暫定大統領、ラウラ・チンチージャ前コスタ・リカ(CR)大統領、ミゲル=アンヘル・ロドリゲス元CR大統領。5人はすぐにMUD幹部と会合、16日の投票監視の手はずを整えた。
5人のうち、パストラーナとキロガは今月5日、JMサントス・コロンビア大統領とボリビアのエボ・モラレス大統領に、ベネスエラ問題を話し合う南米諸国連合(ウナスール)の緊急首脳会議を開催するよう要請している。
そのモラレス・ボリビア大統領は15日、米州諸国機構(OEA)のルイス・アルマグロ事務総長がベネスエラの有権者に16日の投票に参加するよう14日呼び掛け、「ベネスエラが独裁体制に占拠されている」と非難したのに対し、「ベネスエラを軍事占拠したがっているのは米帝国だけであり、アルマグロは帝国の召使いに成り下がっている」と糾弾した。
ベネスエラのサムエル・モンカーダ外相は15日、モラレスの連帯に謝意を表明した。同外相はまた、英政府がANC開設に異議を唱えたのに対し、これを糾弾した。
ボリビア政府は10日、モラレス大統領を暗殺する陰謀がある、と警告を発した。同国の右翼野党国会議員ノルマ・ピエーロラは12日、「ボリビア軍部隊300人がベネスエラに展開中」と発言、内外に波紋を呼んでいる。
これについてボリビア政府は15日、虚偽情報として否定し、10日以内に発言の基となった証拠を提示しなければ法的措置をとる、と同議員に伝えた。ボリビア国防相は、在ベネスエラ大使館に武官4人、同国士官学校などに軍人留学生17人がいるだけだ、と明らかにした。
一方、マドゥーロ政権と敵対しているルイサ・オルテガ検事総長は14日、「最高裁が他者を嘘発見機にかけないと公約すれば、私は17日、科学捜査警察に出頭し、嘘発見機に敢えて臨む」と述べた。
オンブズマンのタレク・サアブは、オルテガの一連の反政府言動に関し、嘘発見機にかけるよう最高裁に要請していた。
カラカスの外港ラ・グアイラには14日、食糧品を詰めたコンテナ500個が到着した。格安食糧配給制度CLAPのための物資で、メヒコ、ニカラグア、パナマなどから輸入されている。マドゥーロ政権は、庶民に食糧を保障し、30日のANC選挙で圧勝したい考えだ。
同政権は、米政府が物資供給を止めるようメヒコなどに圧力をかけている、と非難してる。