2012年6月21日木曜日

7時間続くイタリア映画「ジョルダーニ家の人々」を観る

☆★☆伊仏合作映画「ジョルダーニ家の人々」(2010年)を6月19日、試写会で観た。家を朝9時に出て、帰宅したのは1830だった。上映時間と休憩30分を足すと7時間余り。それもそのはず、4回続きの一挙上映だからだ。東京神田神保町の岩波ホールで7月21~9月14日、上映される。

★愛の結実・復活・破綻・再生が全体を貫く基本テーマ。物語の展開は極めて欲張りだ。恋愛、結婚、離婚、出産、家族、死別、不倫、父と息子の対立、少年から壮年までが謳歌する自由性愛、同性愛、別居、堕胎、養子縁組、疑似家族、記憶喪失、精神病、天職などが、ローマの裕福な家庭の日常性のなかで複雑に絡み合い展開する。

☆並行して、米国が仕掛けたイラクとアフガニスタンの戦争、イラン・イラク戦争、クルド人虐殺、国際治安監視団、戦後復興事業、テロリズム、戦争難民、貧富格差、不法移民、麻薬密売、麻薬中毒、人身売買、売春、殺人、マフィア、旧東欧の停滞、エイズ、障害者、介護などの国際問題、社会状況が随所にちりばめられ織り込まれている。

★現代の豊かで教育ある市民は誰も、内外の情勢・状況に無関心でいることは許されないし、無関係で生きることなどできない、ということを作者や監督は言いたいのだろう。主役・準主役が数多く登場するため、日常性だけでは物語の展開が難しい、という事情もあったはずだ。

☆この一族は、深刻な問題を抱えていたイスラム難民母娘を家族として迎え入れる「広い愛」に到達し、破綻した愛を再生させる。一方で、精神分析医である一族の娘は、記憶を喪失していた軍人の記憶を回復させ、昔の婚約者との愛を完成させてやるが、自身は夫にもはや愛していないと告げて別れてしまう。彼女の今後の生き方に余韻を持たせて物語りは終わる。

★小言を言えば、字幕に「出れる」という「ら抜き」ならぬ、正しい「出られる」という言葉を知らない<ら知らず>の誤った日本語が3か所も出てくること。みっともない。字幕はフィルムとともに残る。日本語文法を学ぶべきだ。

☆総じて、楽しめる作品だ。弁当と飲み物は必携。