2012年6月4日月曜日

ボリビアで米州諸国機構総会開く

▼▽▼ボリビア・コチャバンバ市北方郊外ティキパヤ市のバージェ大学で6月3日、米州諸国機構(OEA=オエア、英語ではOAS)の第42回総会(外相会議)が開会した。「食糧安保」を中心議題として、5日まで続く。

▽ボリビアのエボ・モラレス大統領は開会演説で、「OEAは1948年の創設時から米国の<植民地省>として、米国に奉仕する機関だった。<アメリカーノス(米州人)のためのアメリカ(米州)>というOEAの標語は<米国人のためのラ米>という意味でしかなかった」と前置きし、「OEAには、米国のための奉仕機関として死ぬか、米州全人民のために奉仕する機関に生まれ変わるか、いずれかの選択肢しかない」と、厳しく批判した。

▼モラレスはまた、米政府の意向を反映させる傾向の強い、OEA機関「米州人権委員会(CIDH=シダーチェ)」に関して、「CIDHは内政干渉をしすぎる。米政府の政策に従わない国々の人権だけが問題視される。なぜ米国内の人権問題をも問題視しないのか。普遍性を持つべきだ」と指摘し、「CIDHが支配と服従のための機関である実態を直視し、真剣に見直しを図るべきだ。それができないのなら、CIDHは消滅すべきだ」と強調した。

▽OEAのホセミゲル・インスルサ事務総長(チリ元外相)は、モラレス演説に先立つ開会演説で、CIDH問題は慎重に扱うべきだと注意を喚起していた。モラレスは、それを完全に無視した。

▼モラレスはさらに、米州に名目的に存在する集団安保体制「米州相互援助条約(TIAR=ティアール)」に関連させて、「TIARが真に存在すれば、マルビーナス(M)諸島はアルゼンチンのものになっていたはずだ」と、1982年の亜英マルビーナス戦争時に米国が英国を支援し、TIARが事実上消滅したことに注意を喚起した。その上で、「M諸島が亜国のものならば、太平洋岸はボリビアのものだ。ボリビアは1825年に太平洋国家として誕生した。海岸領土回復の意志を決して捨てることはない」と強く語った。これは、19世紀後半にチリとの太平洋戦争でチリに広大な領土を奪われ内陸国家になってしまった史実を踏まえ、<海への出口>回復の悲願を米州に改めて印象付けるためだ。

▽一方、会議に参加しているベネズエラのニコラース・マドゥーロ外相は、ボリビア国営通信ABI(アビ)に、「OEAとCIDHの劣化について討議せねばならない」と述べた。またエクアドールのリカルド・パティーニョ外相も、「ラ米に進歩主義政権が登場したため、OEAはかつてのように振る舞うことができなくなった。変化できないならば消滅するしかない」と語った。同国のラファエル・コレア大統領は、今会議で発言する予定。