ペルーの首都リマで4月13日、第8回米州首脳会議が開会した。議長を務めるマルティン・ビスカラ秘大統領は開会演説で、ラ米諸国に蔓延する収賄など腐敗に触れ、「世界銀行統計によれば、米州全体で毎年、全GDPの2%が腐敗によって失われている」と指摘。腐敗撲滅の必要性を強調した。
開会式は国立大劇場で催された。会議は14日、首脳らが発言する全体会議を開き、最終宣言を採択して閉会する予定。
首脳会議に先立ち市内では、「市民社会」、「青年」、「企業家」の各フォロ(フォーラム)が開かれた。また並行して、米州の左翼・進歩主義陣営の「人民サミット」が開かれている。人民サミットは13日、ベネズエラとキューバへの連帯を表明した。
今首脳会議は、腐敗問題と並んで「ベネズエラ問題」が中心議題と目されている。だが同国のニコラース・マドゥーロ大統領は、ビスカラ大統領から招待を取り消されて欠席。13日はカラカスで、反チャベス大統領クーデター未遂事件16周年記念日の行事に出席した。
反マドゥーロで攻勢をかけてきたドナルド・トランプ米大統領は「シリア情勢」を理由に欠席。マイク・ペンス副大統領が代理出席した。そのペンスは首脳会議開会式でビスカラ大統領に挨拶しただけで、宿舎に引き返した。米軍によるシリア攻撃に関しホワイトハウスと緊急連絡をとる必要が生じたため。
言わば、トランプ、マドゥーロの「主人公」2人が欠席し、拍子抜けした会議となった。この首脳会議は米州諸国機構(OEA)加盟34か国の会合だが、求められて前回出席したOEA外のキューバのラウール・カストロ国家評議会議長は今回は欠席。ブルーノ・ロドリゲス外相が代理出席してる。
ニカラグアのダニエル・オルテガ、エル・サルバドールのサルバドール・サンチェス=セレーンの両大統領も欠席。22日に大統領選挙のあるパラグアイのオラシオ・カルテス大統領も出席しなかった。
ラウール欠席は、19日の議長交代への準備に集中するためとされる。だが87歳と高齢であるのに加え、ペンスがリマで反体制キューバ人活動家らと会合するなど反玖言動が目立っているのも関係しているはずだ。
また、最大の域内同盟国で原油供給国であるベネズエラのマドゥーロ大統領が会議から締め出された以上、ラウールとしては出席するのは得策でないとの判断も働いただろう。
ボリビアのエボ・モラレス大統領は首脳会議開会に先立つ「企業家フォロ」で演説、資本主義・新自由主義は人類の生存を危うくすると警鐘を鳴らした。そのうえで、国家、民間、協同組合、共同体が参加するボリビア型モデルは多数者に有益で、年率5%の経済成長を達成している、と自画自賛した。
それによると、エボが政権に就いた2006年に95憶ドルにすぎなかったGDPは17年には278憶ドルと、3倍に膨らんだ。その間、公共投資は6億3900万ドルから80憶ドル12倍に拡大した。また貧困率は41・2%から17・9%に下がった。
メキシコのエンリケ・ペニャ=ニエト大統領は13日リマで、ジャスティン・トゥルドー加首相と、北米自由貿易協定(TLCAN・NAFTA)の対米交渉をめぐり会談した。同大統領はペンスから申し出のあった14日の会談を受け入れた。
▼エクアドール事件
一方、エクアドール(赤道国)のレニーン・モレーノ大統領は12日、リマからキトに急遽戻り、直面していた重大事件に対応した。
エクアドールの最有力紙「エル・コメルシオ」の取材班3人がコロンビア国境地帯で3月26日拉致され、4月12日、殺害されていた事実が確認されたのだ。モレーノ大統領は13日キトで記者会見し、同日から16日まで4日間の国喪を宣言した。
殺されたのはハビエル・オルテガ記者(32)、パウール・リバス写真記者(45)、運転手エフライーン・セガーラ(60)。国境地帯のエスメラルダ県で取材中、コロンビアゲリラFARCの残党「オリバー・̪シニステラ戦線」に拉致、拘禁された。
「グアチョ」という頭目が率いる同戦線は、FARCの大多数が応じた和平を蹴り、麻薬取引で生き延びてきたとされる。人質にした3人の解放条件に、エクアドールとコロンビアが結んでいる麻薬取引取締協定の破棄を求めていたという情報がある。
モレーノ大統領は、「グアチョ」逮捕に繋がる情報の提供者に賞金10万ドルを与えると発表した。赤道国の通貨はパナマ、エル・サルバドール同様、米ドル。
3人の死亡確認を受け、エクアドールとコロンビアの国軍は国境地帯に展開、「グアチョ」らの捜索に当たっている。国喪の対象には、先に同一味との戦闘で死んだ赤国軍兵士4人も含まれている。