ボリビア政府は4月17日、南米諸国連合(ウナスール)の議長国を亜国から引き継いだと正式に発表した。任期は向こう1年間。
この日付は、ウナスールの発足記念日。2007年のこの日、ベネズエラのマルガリータ島で南米エネルギー首脳会議が開かれた折、南米諸国共同体(CSN)をウナスールと改名することが決まった。その後、08年5月ブラジリアでウナスール設立条約が結ばれた
亜ウルグアイ伯パラグアイ智ボリビア秘コロンビア赤ベネズエラのラ米10か国と、ガイアナ、スリナムの計12か国が加盟。本部は赤道国のキトに置かれた。
ウナスールは、南米の大多数が進歩主義・左翼諸国となっていたことから、域内の紛争などを解決する有力な手段だった。
だが2013年にウーゴ・チャベスVEN大統領が死去、15年末、亜国に財界右翼のマウリシオ・マクリ大統領が登場、16年8月、ブラジル国会のクーデターでヂウマ・ルセーフ大統領が弾劾され労働者党(PT)政権が崩壊。南米は急激に右旋回した。
するとウナスールは団結を失い、実質的に機能しなくなった。首脳会議も開けなくなった。
そんな状況の下、ボリビア先住民族アイマラ人のエボ・モラレス大統領がウナスールの顔となった。エボは政治基盤であるコチャバンバ州のサンベニート市にウナスール・ボリビア本部を建設中。エボはウナスール活性化を外交の中心に置いている。
ボリビア外務省は17日、「ウナスールには南米市民4万人の認同(イデンティダー=アイデンティティー)が懸かっている。それは文化、社会、経済、政治的な南米統合過程で形成される」と声明で強調した。
さらに、「そのためにボリビアは対話、協力、平和、民主、市民参加、人権尊重を深化させる」と述べた。
ボリビアはまた、ラ米・カリブ諸国共同体(CELAC、加盟33か国)の議長国を19年に務める。
難題は、ウナスール事務局長が空席であること。17年1月にエルネスト・サンペル(元コロンビア大統領)が退任して以来、後任が決まらない。南米右旋回で12か国の合意形成が困難になったためだ。
このほどリマで開かれた第8回米州首脳会議でも南米は、「反ベネズエラ」の亜パラグアイ伯智コロンビア秘ガイアナと、そうでないボリビア赤ウルグアイVENスリナムと、「7対5」に分裂した(VENは不参加)。
エボは首脳会議後の15日カラカスを訪問、ニコラース・マドゥーロ大統領に首脳会議の内容を伝え、併せてウナスールとCELACの運営について協議した。
カラカスでの記者会見でマドゥーロは、「リマ会議ではイデオロギーと政治の不寛容が支配した。それは米州首脳会議が終わりの始まりに陥ったことを意味する。かつて南米右翼がコロンビアのウリーベ政権だけだった時、誰もコロンビアを制裁しようなどと言い出さなかった」と述べた。
マドゥーロはまた、VENはウナスール、CELAC、ALBA(米州ボリバリアーナ同盟)、カリブ石油連帯機構(ペトロカリーベ)などを通じて地域の多様性を追求してゆく、と語った。
VEN外務省は17日、カラカスの米大使館(大使無し)を訪れ、米国が14日リマで「反ベネズエラ」のリマグループ(グリマ)14か国と共に(首脳会議枠外で)宣言を出したことに内政干渉として抗議した。
マドゥーロは17日、米英仏軍によるシリア爆撃について、「VENにはシリア系100万人がいる」と指摘、爆撃を糾弾した。
一方、エボはラパスで17日、テレスール(南部テレビ放送、本部カラカス)との会見で、「昨年9月国連の場でトランプ(米大統領)と会ったラ米諸国の大統領の一人からリマで打ち明けられたのだが、トランプからベネズエラへの軍事介入に賛成するよう働きかけられたという」と暴露した。
トランプは当時、国連でブラジル、コロンビア、ペルーなどの大統領と会談している。
コチャバンバ市では今月下旬、第12回南米議会議長会議、列国議会同盟議長会議が開かれる。