2013年8月4日日曜日

石田憲著『日独伊三国同盟の起源』を読む


 日本に真の意味での外交はない。あれば、外相がかくも頻繁に代わることはない。本書は、日本の外交が戦前から内政の付けたしのような存在であったことを証明する。

 また、日本の制度が決定責任の所在が不明瞭であることを暴き出す。これも今日に至るまで変わらない。「天皇制への甘え」が背景にあるのは疑いない。凡庸な国会議員が群れなす日本では、天皇制は無責任の隠れ蓑として都合がいいのだろう。

 著者は、吉田茂の素顔をあぶり出す。世に言われるほど優れた存在ではなかったことがわかる。「ナチ」絡みの発言で不勉強ぶりと醜態をまたも暴露した孫議員こそ、本書を真っ先に読むべきだろう。

 われわれイベリア半島・ラ米学徒には、スペイン内戦に関わる日独仏3国の事情や、フランコ反乱軍がムッソリーニの一方的攻勢に不快感を示していたことなどが極めて興味深い。同内戦を新しい角度から見る、という視点を本書は拓いてくれる。
 
 [副題「イタリア・日本から見た枢軸外交」。講談社、1600円]