ラ米・カリブ諸国歴訪中の安倍首相は7月28日、トゥリニダード・トバゴ(TT)訪問を終え、コロンビアの首都ボゴタに到着した。TTでは首都ポートオブスペインで、TTおよびカリブ共同体(カリコム)首脳らと首脳会議を開き、個別会談した。だが、カリコム首脳14人のうち5人が欠席するなど、盛り上がりはいま一つだった。
TTのカムラ・パサードビセッサー首相との27日の会談で安倍は、東京にTT大使館を開設するよう要請した。これに対しTT首相は外務省と検討すると応じながら、投資受け入れなどを扱う経済代表部をまず開設する可能性に触れた。それが将来的に大使館に格上げされる場合、TTだけでなくカリコム代表部の機能を備えることになる、説明した。
安倍は27日、カリコム輪番制議長国アンティグア・バーブーダのガストン・ブラウン首相、およびTTと並ぶカリコム大国ジャマイカのポーシア・シンプソンミラー首相とも会談した。ブラウン首相は、安倍首相とカリコム首脳の会合が開かれた28日には、カラカスでのチャベス生誕60周年記念行事に出席している。
安倍は28日のカリコムとの首脳会議の後、バルバドス、ドミニカ、グレナダ、セントキッツネーヴィスの首相、ガイアナおよびハイチの大統領とそれぞれ個別会談を行なった。
ジャマイカ・オブザーバー紙は29日、「TT日本国交樹立50周年とカリコム日本友好年」を記念した首脳会議と、会議の意義を認めながらも、27日には「この首脳会議には中国の巨大な影が差している」と指摘していた。
安倍首相はカリコムとの首脳会議で、「力や威嚇による一方的な現状変更の試みがある」と暗に中国を批判した。まさに同紙の指摘通りだった。
会議では、日本による経済援助、防災協力、地球温暖化対策協力などが決まった。
また「ラテンポースト」は29日、中国の習近平主席が7月半ばのBRICS首脳会議で発表された金融機関に巨額の出資をすることや、ラ米のインフラ整備援助200億ドル供出を約束した事実を挙げて、安倍訪問が中国の外交成果を覆すのは難しい、と論評した。
カリコム加盟14カ国のうち6カ国は台湾と外交関係を維持しているが、安倍が要請した国連安保理非常任理事国選挙での日本支持について、同6カ国は応じやすい、と見るメディアもある。
一方、英紙フィナンシャル・タイムズは28日、「地球を駆け巡る安倍晋三は中国に取りつかれた世界に日本を売り込んでいる」と題した香港発の解説記事を掲げた。「就任後18ヶ月間に47カ国を訪問した安倍は、世界のどの首脳と比べても桁外れに外遊が多い」と指摘。「安倍は習主席の後を追いかけている」と、23日に主席のラ米歴訪が終わった直後の25日に安倍が歴訪を開始した事実を皮肉っている。
同紙はまた、2011年の東電福島原発の放射能漏れ重大事故の後ゆえに、「安倍は石油と天然ガスの供給源を探す必要に迫られている」と述べた。
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安倍首相一行は28日夜、ボゴタの軍事空港に到着し、マリーア・オルギン外相に迎えられた。29日にはフアン・サントス大統領と会談する。
有力紙エル・ティエンポは、「安倍首相が中韓両国を訪問していないのは、両国との緊張関係を見れば不思議はない」と論評した。また安倍が、「2008年のコロンビア・日本友好100周年」に首相経験者としてコロンビアを訪れた、と紹介している。