2011年12月16日金曜日

冬のタンゴ

★☆★モンテビデオ生まれの「ラ・クンパルシータ」、ブエノスアイレス生まれの「カミニート」から、破調アストル・ピアソーラの「リベルタンゴ」まで18曲を並べて、冬、演奏する。だから「冬のタンゴ」だ。しゃれている。欧州(コンティネンタル)タンゴの「薔薇のタンゴ」や「夜のタンゴ」を連想させる。

     若い亜国人レオナルド・ブラボは、ギターの名手。バンドネオン早川純、ヴァイオリン喜多直毅、コントラバス田中伸司と2010年にクアルテートを組んだ。若い躍動的な演奏家ばかりで、疲れが見えない。12月16日夜、東池袋で聴いた。なかなか良かった。

     伝統的なタンゴの「4つの心」は、バンドネオン、ヴァイオリン、コントラバス、そしてピアノだ。だがブラボのクアルテートは、ピアノの地位をギターが占める。ここに味がある。昔、タンゴ王カルロス・ガルデルはしばしば、ギターの伴奏だけで歌っていた。その映像を思い出した。

             これが、セステート(6重奏)となると、オルケスタ・ティピカ(標準編成の楽団)の半分の規模になるから、迫力も増す。 ブラボのギターは言わばピアノ役で、主旋律を弾くから、ピアノが入ると、主導権争いが起きる。しかし、ブラボのギターと誰かのピアノが共演ないし競演するセステートを聴いてみたいものだ。

     テノールの中鉢聡(ちゅうばち・さとし)は「カミニート(小径)」、「エル・ディア・ケ・メ・キエラ(思いの届く日)」など4曲を歌った。カンツォーネ流だが、楽器の音量を上回る声量で歌うには、日本ではオペラ歌手の登場を願うのが手っ取り早い。伊達男姿で流し歌い、タンゴ歌手の雰囲気がよく出ていた。


     つのだたかし(リュート演奏家)が進行役を務め、ギターも弾いた。タンゴ好きの漫画家高井研一郎が幕間に登場した。

     今年のタンゴの生の聴き納めになりそうだ。いや、もう一回、機会があったはずだ。