2011年12月1日木曜日

チリ銅会社めぐり<三井・三菱対決>

▼▽▼チリでは1970年代初期、アジェンデ社会主義政権が銅山を国有化した。だが、同政権を倒したピノチェー軍政は、「シカゴ学派」の新自由主義経済政策をほぼ全面的に受け入れて広範な民営化を進め、多くの銅山が民営に戻された。今日、同産業はアジェンデ時代に生まれた国営銅公社(CODELCO=コデルコ)系と民間企業系に分かれている。

    英アングロアメリカン社(AA)は1978年の民営化時に、銅山や精銅工場を買収し、子会社アングロアメリカン・スール社(AAS)に経営させてきた。だがコデルコはAASの資本を最高49%まで買収する権利を持つという「過去の取り決め」に則り、2012年1月にその買収を実行する段取りを決めていた。

    コデルコは買収資金の大きな部分として、今年10月半ば、三井物産から67億5000万ドルの融資を受ける契約を結んだ。コデルコはまた、三井物産を通じて年間銅3万トンを10年間売る契約も結んだ。

    この事実に驚いたAASは11月9日、資本の24・5%を54億ドルで三菱商事に売却した。これにより、コデルコは49%の残り半分(24・5%)しか買収できなくなった。そこで激怒した。

    事態は暗礁に乗り上げた。コデルコは11月30日、AASと三菱の契約を無効とする訴えを起こすのを前提として、 AASと三菱の契約に至る経緯を示す文書などの開陳を法廷に請求した。

    これに対し、AASの親会社AAは、コデルコの措置を「法を遵守する外国企業に対し権力を濫用しようとしている。法治国家に対する重大な攻撃だ」と非難した。

    三井、三菱両社はチリでは口をつぐんでいる。現地では、[AAS+三菱]と[コデルコ+三井]の闘いとして強い関心を集めている。

    新自由主義大賛成のピニェーラ政権だが、コデルコが国営企業であるため、コデルコ支持の立場を示している。

(2011年12月1日 伊高浩昭執筆)

           サンティアゴ高裁は12月21日、コデルコの訴えを認め、AAS社に三菱への株譲渡を禁止する裁定を下した。「再審なし」の裁定で、裁定内容は確定した。