2015年9月21日月曜日

日本ラグビーの対南ア戦勝利に思う

 南アフリカが誇るラグビー代表チーム「スプリングボックス」に日本が勝った! 英国ブライトンで9月19日、W杯大会初戦、34対32で逆転勝利したのだ。これには驚愕した。

 高橋尚子の五輪マラソンと、荒川イナバウアー静香の五輪フィギュアースケートの金メダルは特別な快挙だった。だが、ラグビーのこの勝利は、パラディグマ(パラダイム)が違う。つまり異次元なのだ。

 私は30余年前、3年余りヨハネスブルクに駐在していた間中、南ア・ラガーの凄さに目を見張らされていた。当時、最も厳しい状態にあった人種隔離(アパルトヘイト)体制の守護神のような存在に映った。

 虐げられていた多数派で貧しい痩せた黒人のスポーツはサッカーだった。「白人のラグビー」と「黒人のサッカー」、これも、スポーツ界のアパルトヘイト現象だった。

 今大会前にも、黒人選手を加えるか否かでもめたと聞く。この辺りに、南ア・ラグビーの弱さがある。

 私は現役記者時代、五輪大会2回、サッカーW杯大会2回、柔道、バレーボールなどの世界選手権、ワールドカップ、プロボクシング世界選手権試合など、さまざまなスポーツ競技を取材した。

 「スポーツのわからない外信記者は駄目、国際情勢のわからないスポーツ記者は駄目」と見なされていた時代だ。私にとって、スポーツは国際情勢の一部だった。

 いま、40年に及んだスポーツ取材を振り返ってみて、今回の日本ラグビーの勝利ほどの驚きは味わったことがないのを確認した。1968年のメヒコ五輪サッカーの3位決定戦があったアステカ競技場の記者席に私はいた。あの時の銅メダルの驚きも、今回のラグビーの勝利の驚きに及ばない。

 日本ラグビーチームは国際多人種チームであり、文化的混血選手団だ。オコエ、ダルビッシュ、室伏を挙げるまでもなく、優れた肉体的混血選手も増えている。彼らはダブルであり、トゥリプレである。球技も文化的混血によって力は何倍にもなる。

 日本の国会も人種混交、文化的混血が進めば、視野が国際的となり思慮深くなって、憲法を蹂躙するような議員らの居場所はなくなるだろう。